茶色のスカプラリオ

カルメル山の聖母のスカプラリオ：歴史、信仰、そしてカトリック教会における位置づけ

カルメル山の聖母のスカプラリオ、通称茶色のスカプラリオは、カトリック教会において深く根付いた信仰の象徴です。カルメル修道会と跣足カルメル修道会の修道服として用いられてきたこのスカプラリオは、聖母マリアがカルメル山の聖母としてこれらの修道会を守護するとされる信仰に基づいています。小型のスカプラリオは、宗教的な護符として広く一般信者にも普及しており、特に7月16日のカルメル山の聖母マリアの祝日に授与されることが一般的です。

バチカン教皇庁典礼秘跡省は、茶色のスカプラリオを身につけることを、「聖母マリアへの深い信頼と献身の証」と位置づけています。スカプラリオを身につける者は、聖母マリアの加護の下に身を置き、霊的な成長と祈りの生活を誓うことになります。

起源と信心の歴史

スカプラリオの起源は、修道士たちが作業時に着用していた前掛けのような衣服に遡ります。大きな布を肩から掛け、前後に垂らしたシンプルなデザインは、やがてカルメル会を含むいくつかの修道会の修道服に組み込まれていきました。12世紀、カルメル山の聖地に暮らしていたカルメル会の隠修士たちは、巡礼者風の服装をしていましたが、13世紀半ばにヨーロッパへ移住し托鉢修道会となると、茶色のスカプラリオを含む新たな修道服を採用しました。

聖母マリアが13世紀中頃のカルメル会総会長、聖サイモン・ストックにスカプラリオを与えたという伝説も有名です。この伝説によれば、聖母マリアは聖サイモンにスカプラリオを授け、「これを身に付けて死ぬ者は救われるでしょう」と告げたと言われています。この伝説は、14世紀後半からの記録に現れ始めます。

中世において、修道服は修道会員のアイデンティティを象徴する重要なものでした。修道服を脱ぐことは修道会を去ることを意味し、1369年のカルメル会会則には、スカプラリオを着用せずにミサを執り行うと破門となる旨が明記されています。また、スカプラリオを着用せずに就寝することも重大な違反と見なされていました。

一般信者によるスカプラリオの着用は、カルメル会とその霊性に深く関わりたいという信仰心の表れでした。フラタニティや信徒会、カルメル会の第三会に属する人々は、修道服の一部であるスカプラリオを身につけることで、所属を示しました。一般信者へのスカプラリオ普及は、16世紀末から本格化し、1600年には、修道士へのスカプラリオの祝福方法を記した文献も現れています。

歴史的な問題点

聖サイモン・ストックへの聖母マリアの出現という伝説については、歴史的な裏付けが不足しているという指摘もあります。この伝説が広く知られるようになったのは14世紀後半であり、約150年前に起きた出来事として語られるようになりました。しかし、聖サイモン・ストックの初期の人生や、この出来事に関する当時の記録はほとんど残されていません。著名なカルメル会の著作家も、この伝説について言及していません。

また、他の修道会でも聖母マリアから修道服を授かったという主張があったにも関わらず、カルメル会の修道士がそのことを認識していなかったという記録も存在します。これらのことから、聖サイモン・ストック以前にも、カルメル会の修道士が神秘的なビジョンを経験していた可能性があり、それが後に聖サイモン・ストックに結び付けられたという説も考えられています。

カルメル会本部は、聖母マリアの出現の史実性については否定的な見解を示しつつも、スカプラリオが聖母マリアの保護とイエス・キリストへの献身の象徴であるという信仰の重要性を強調しています。

スカプラリオの約束

スカプラリオには、それを身につける者が救済されるという約束が伝えられています。当初はカルメル会の修道士に限定されていたこの約束は、後に一般信者にも広まりました。しかし、「天国への簡単な道」という解釈は、信仰への批判を招きました。カトリック教会は、スカプラリオのような宗教的アイテムが、聖霊による恵みの自動的な授与を保証するものではないと明確にしています。

茶色のスカプラリオを熱心に信仰する人々は、時に迷信に陥っているとの批判も受けてきました。しかし、伝統的な信仰では、スカプラリオは聖母マリアの執り成しによる神の恩寵への準備、そして臨終の際にその約束を保障するものと考えられています。

スカプラリオに関連する信念

茶色のスカプラリオの中心的な信仰は、聖母マリアへの献身です。1951年、ピウス12世は、スカプラリオを「聖母マリアへの奉献の印」と位置づける書簡をカルメル会に送りました。

「サバティーン・プリヴィレジ」と呼ばれる、煉獄の死者への救済に関する主張も広く信じられていましたが、バチカンは1613年にその主張を否定しました。しかし、カルメル会は、生涯スカプラリオを着用し、貞節を守り、毎日祈りを捧げた信者には、死後、特に土曜日に聖母マリアの加護があるという教えを継続しています。

現代のカルメル会は、聖母マリアへの献身的な祈り、特に土曜日の祈りを推奨しています。これは、教会の公式な教義と矛盾するものではありません。

外観・着用など

茶色のスカプラリオは、2枚の布で構成され、肩から掛けます。特別な縫製やイメージ像は必要ありません。かつては純粋なウールが求められましたが、現在は耐久性のある素材が用いられています。通常は修道服の下に着用されます。熱帯気候ではウールのスカプラリオの劣化が早いため、祝別されたメダルのスカプラリオも認められています。しかし、布製のスカプラリオが優先されています。

茶色のスカプラリオの授与と登録の儀式

カトリック教会の司祭は、洗礼を受けた信徒に茶色のスカプラリオを授与できます。授与には、聖母マリアへの献身と、キリスト者としての生き方を誓う儀式が含まれます。1996年に典礼秘跡省によって承認された儀式が広く用いられています。

茶色のスカプラリオについてのカトリック教会の教え

カルメル会員であるキャバノフ神父によると、カトリック教会は茶色のスカプラリオを、聖母マリアの修道服であり、聖母への属する印、そして生前と死後の保護の特権と捉えています。また、スカプラリオは、聖母マリアへの特別の崇敬、聖母への奉献、聖母マリアの美徳の模範となる生き方を促すものとされています。

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