草戸千軒町

草戸千軒町の歴史と遺跡

草戸千軒町（くさどせんげんちょう）は、広島県福山市に存在した中世の都市であり、鎌倉時代から室町時代にかけて約300年間にわたって栄えた大規模な集落です。この町は、瀬戸内海の芦田川河口に位置し、繁栄の中心には商業活動がありました。最近の遺跡発掘調査によれば、草戸千軒町は、近隣の長和荘や地域の領主であった渡辺氏、また杉原氏の保護の下、物流が活発な交流拠点として発展し、多くの商工業者がいました。さらに、朝鮮半島や中国大陸との交易も行われていたと考えられています。また、草戸稲荷神社や明王院といった神社仏閣も近くに存在し、ふたつの門前町としての機能も持っていたと考えられています。

遺跡の発掘と河川改修

草戸千軒町遺跡の発見は、江戸時代初期の備後福山藩水野家の入封に伴う河川の流路改修以前までさかのぼります。江戸時代の初期には、芦田川は現在のような流路ではなく、今はもう廃川となっている鷹取川方面や福山駅前方面へ流れていました。この時期の干拓事業によって、当時の町は南東の福山湾に直接面していたとされています。しかし、20世紀末までの間に、遺跡は芦田川の洪水対策工事によって取り除かれ、その大部分が消失してしまいました。とはいえ、河川敷にはまだ遺跡の痕跡が残る可能性があります。町の出土遺物は広島県立歴史博物館で保管されており、そこで国の重要文化財として展示されています。この博物館には、草戸千軒町の町並みが実物大のジオラマとして再現されており、往時の町の様子を知る貴重な資料となっています。

草戸千軒の名前の由来

「草戸千軒」という名称は、江戸時代の学者である宮原直倁が著した地誌『備陽六郡志』に由来しています。この中で、草戸千軒町が洪水によって廃れた記録があり、その後この町は一時的に存在すらも忘れ去られてしまいました。戦後の1961年から行われた大規模な発掘調査によって、草戸千軒町の存在が明らかになった際には、「東洋のポンペイ」と称されるように、その重要性が再認識されました。ただし、最盛期に完全に埋もれたポンペイとは異なり、草戸千軒町は洪水で埋まった時期には既に廃絶に近い状態であったと考えられています。この背景には、鎌倉時代から戦国時代にかけての戦乱や、福山城築城に伴う改修事業があると言われています。

現在の草戸千軒町

草戸千軒町遺跡からは、さまざまな栽培植物や、室町期の「中世木簡」が4千点以上出土しています。1982年には、これらの木簡に関する正式な報告書も発表されており、草戸千軒町の歴史的な意義が科学的に裏付けられています。

草戸千軒町の多様な文化や商業活動の面を知るためには、広島県立歴史博物館を訪れ、展示を見学することが最適です。この場所では、当時の生活を体感し、歴史の深さを感じられる貴重な体験ができます。

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