荒田

荒田についての詳細

荒田は、耕作が行われていない田地を指し、この名称は古代および中世において、何らかの理由により耕作が放棄された土地に使われてきました。荒田の成り立ちには主に二つの原因があり、一つは土地本来の条件、もう一つは自然災害、特に洪水によって引き起こされた荒廃です。これらの荒田は、古くから農業の変遷や土地利用の歴史に密接に関連しており、また地域の農業環境にも影響を与えてきました。

荒田の概念は、その成り立ちや状況により多様な側面を持っています。具体的には、彌永貞三の研究によると、律令制下ではこれらの土地を「荒廃田」や「不堪佃田」と呼び、荒田の状態に応じて二つの分類がされていました。3年未満の荒田は「年荒」、3年以上荒廃しているものは「常荒」となります。このように分類されることによって、土地の管理や再開墾に関する法律が整備されていました。

田令29条では、常荒田は官司への申請を通じて希望者に借佃や賃租が許可され、具体的には公田では6年、私田では3年の借用が認められていました。しかし、この制度による再開墾はあまり進まず、特に9世紀以降は荒田の再開発を促進するために特典を与えることが行われました。例えば824年の太政官符では、「常荒田」を開墾した者にはその後の土地利用権が許可され、さらに開発申請から6年間は租の免除が設けられていました。

828年には、再開墾を目指す者が6年以内に死亡した場合、その子孫がその権利を継承できるという規定まで設けられ、民部省式上でも同様の内容が記されています。

平安時代には、国司が租税の徴収を合理化するために、管理の難しい土地を荒田として届け出るケースも見られました。その後、これを利用する有力農民や地域の官人たちが再開発に取り組み、私人による土地の私領化が進展しました。

中世に入ると、名田の成立や国衙、荘園領主による農業環境の整備があったことで、荒田の積極的な開墾が進みました。しかし一方で、農業生産性が低い土地では連作が不可能となり、耕作と休耕を交互に行う土地利用が見られ、これを「片荒」と呼んでいます。片荒による休耕地は放牧地として利用されたものの、その後再度耕作地としての利用を計る「荒田打」は容易ではありませんでした。

このため、荒田打が成功した土地は、新田と同様の権利が認められることもありました。なお、かつて「片荒し」は休耕と現作を交互に行う農法として誤解されていましたが、実際には一年の半分を休む一毛作田を指すものであり、実際の農業慣行とは異なります。

荒田の研究は、古代から中世にわたり日本の農業や土地利用の理解を深める上で非常に重要なテーマです。その背後には、さまざまな自然災害や経済的な要因が絡み合い、現代に至るまでの農業の発展や人々の暮らしに影響を与えてきたのです。

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