田令

田令（でんりょう）は、律令制における編目の一つで、土地制度や税制について定めた法令です。養老令においては9番目に位置し、全37条から構成されています。その内容は、田租の税率や納入時期、口分田の班田収授や管理、位田・職分田・功田・賜田・公田・神田・寺田・官田・駅田・園地・宅地・競田・新出地・荒廃田など、多岐にわたる規定を設けていました。

中国においては、睡虎地秦簡に「田律」が含まれていることから、秦の時代には既に田地に関連する法令が整備されていたことが分かります。しかし、「田令」という名称を持つ法令が初めて登場したのは、隋の開皇令においてです。日本の田令は、この中国の制度を参考にしつつ、独自の発展を遂げました。

養老令における田令では、宅地と園地のみ売買が許されていましたが、口分田や位田・職分田などは売買が禁止され、厳格な条件下で1年単位での賃貸借（賃租）のみが許可されていました。この規定は、土地の私有化を抑制し、国家による土地管理を徹底するためのものでした。

大宝令は、現存する逸文からすると、六年一班や荒廃田に関する規定において養老令と異なる部分があるものの、基本的には養老令の規定と同じであったと考えられています。また、天平15年（743年）には墾田永年私財法が施行されていますが、養老令にはその影響が見られないことから、大宝令から養老令への移行時に大きな変更はなかったと推測できます。

さらに、隋や唐の田令と比較すると、大宝令・養老令の田令は永業田の規定を導入しなかったこと、そして、令全体の後半部分ではなく前半部分に編目の順番を移しているという特徴があります。これは、日本の律令制度が中国の制度を模倣しつつも、独自の発展を遂げたことを示す一例と言えるでしょう。

田令は、古代日本の社会構造や経済活動を理解する上で欠かせない法令であり、その詳細な規定は、当時の人々の生活や国家の統治システムを深く理解するための重要な手がかりとなっています。

参考文献

石上英一「田令」（『国史大辞典 9』吉川弘文館、1988年）
榎本淳一「田令」（『日本史大事典 4』平凡社、1993年）
* 島善高「田令」（『平安時代史事典』角川書店、1994年）

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