荒野にて

『荒野にて』（Lean on Pete）は、2017年に制作されたイギリスのドラマ映画です。ウィリー・ブローティンが2010年に発表した同名小説を原作としており、アンドリュー・ヘイが監督を務めました。主人公の少年を演じたのはチャーリー・プラマーです。

ストーリー

物語の舞台はオレゴン州ポートランドのデルタ・パーク。15歳のチャーリーは、長い間父のレイと二人きりで生活していました。ある日、彼はパーク内の競馬場で馬主のデルと出会い、厩舎で馬の世話をする仕事に就きます。その頃、父のレイは女性関係のもつれから大怪我を負って入院してしまいます。チャーリーは厩舎での仕事を通して、リーン・オン・ピートという名の競走馬と深い絆を育んでいきます。しかし、父は怪我が元で敗血症を併発し、帰らぬ人となります。身寄りと言えるのは、昔一緒に暮らしたマージ伯母だけでしたが、父はその連絡先を残さずに亡くなってしまいました。行くあてのないチャーリーは、養護施設へ送られることを避けるため、荷物をまとめ、デルタ・パークの厩舎へと逃げ込み、ピートの隣にある小さな部屋で暮らし始めます。やがて、ピートは売却馬対象のレースで勝てず、オーナーのデルはピートをメキシコへ売ることを決めます（これはおそらく食肉用として屠殺されることを意味していました）。ピートがデルのトレーラーに乗せられるのを見たチャーリーは、ピートを助けるため、そのまま馬とともに当てもない旅に出ます。ガソリンも底を突き、所持金も尽きた二人は、東オレゴンの広大な荒野を歩き、マージ伯母がいると思われるワイオミング州を目指します。

キャスト

主要な出演者は以下の通りです。

チャーリー・トンプソン：チャーリー・プラマー
レイ・トンプソン（チャーリーの父親）：トラヴィス・フィメル
ボニー（女性騎手）：クロエ・セヴィニー
デル・モンゴメリー（厩舎オーナー）：スティーヴ・ブシェミ
シルヴァー（チャーリーが炊き出しで出会う男）：スティーヴ・ザーン
リン（レイの不倫相手）：エイミー・サイメッツ
マイク（チャーリーが出会う元軍人）：ジャスティン・レイン
ダラス（マイクの相棒）：ルイス・プルマン
* マージー伯母さん（レイの姉）：アリソン・エリオット

なお、撮影後にトーマス・マンの出演シーンは全てカットされました。

製作

本作の映画化は2015年5月に報じられました。アンドリュー・ヘイがウィリー・ブローティンの小説を基に映画製作に着手したと発表されたのです。キャストの決定は2016年7月に始まり、スティーヴ・ブシェミ、チャーリー・プラマー、クロエ・セヴィニー、トラヴィス・フィメルらが次々と参加しました。9月にはエイミー・サイメッツ、スティーヴ・ザーンらの出演も決まります。音楽はジェームズ・エドワード・バーカーが担当することが2017年3月に報じられました。主要撮影は2016年8月13日にオレゴン州で開始され、ポートランドやバーンズなどがロケ地として使用され、同年9月10日に終了しました。

公開

本作は公開前から配給権が決定しており、2016年5月にはA24が北米配給権を、カーゾン・アーティフィッシャル・アイがイギリスでの配給権を獲得したことが報じられました。2017年9月1日、本作は第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映が行われました。同映画祭では、チャーリー・プラマーが新人俳優に贈られるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞しています。その後、9月10日には第42回トロント国際映画祭で、10月5日にはロンドン映画祭でも上映されました。当初、全米公開は2018年3月30日が予定されていましたが、最終的に4月6日に延期されました。

評価

本作は批評家から非常に高い評価を受けています。映画批評集積サイトRotten Tomatoesでは、162件のレビューに基づく批評家支持率が90%で、平均点は10点満点中7.9点を獲得しています。同サイトの総評では、「『荒野にて』はセンチメンタルなメロドラマに陥ることなく、人生の岐路に立つ主人公に対する共感を保ちつつも、客観的な視点を維持している。本作でのチャーリー・プラマーの演技は、彼に確かな才能があることを証明した」と評されています。また、Metacriticでも44件のレビューに基づき、加重平均値で80/100というスコアを得ています。

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