莚

莚（むしろ）とは

莚（むしろ）とは、藁（わら）やイグサなどの植物を材料として編まれた、簡素な敷物のことです。古くから日本人の生活に密着しており、様々な用途で用いられてきました。

莚の定義

広義には、藁莚（わらむしろ）、茣蓙（ござ）、畳表、菰（こも、薦）など、植物を編んで作られた敷物全般を指します。かつては「ゴザムシロ」や「コモムシロ」など、明確な区別なく呼ばれていたと考えられています。

10世紀の辞書『倭名類聚抄』では、材料によって漢字を使い分けていました。竹製のものを「筵」、菰製のものを「席」と表記しており、材料の違いが認識されていたことが伺えます。

狭義には、稲わらを材料としたものを莚（むしろ）と呼びます。江戸時代の百科事典『和漢三才図会』には、藁莚（わらむしろ）が農家で最も多用される敷物として紹介されています。

なお、菰（こも）はマコモという植物を編んだ敷物を指し、織って作られる莚（むしろ）に比べて経糸の数が少ないのが特徴です。

莚の歴史

莚（むしろ）は、文字で記録された歴史よりも前の時代、先史時代から使用されていたと考えられています。近世になると、農山村の人々が副業として莚の製作を行うようになりました。

莚の製作

莚（むしろ）を製作することを「莚打ち」と呼び、莚を織るための機械を「莚機」と言います。熟練した職人の手によって、一枚一枚丁寧に作られてきました。

筵道（えんどう、えどう）

天皇や貴人、神事において祭神が通る道筋に敷かれる莚の道を「筵道」と呼びます。白い絹を重ねて敷くこともあります。平安時代には、宮中で舞が演じられる際に庭に筵道が設けられました。

春日大社の式年造替では、仮殿から本殿へ祭神が通る道に「清薦（きよごも）」と呼ばれる特別な莚が敷かれます。これは、明治時代以降、同大社の旧神領の農家が稲わらで作ってきたものです。神職が正遷宮前に精進潔斎のために泊まる斎館にも敷かれます。

出雲大社の涼殿祭では、筵道に真菰が敷かれます。

莚の用途

莚（むしろ）は、敷物としてだけでなく、様々な用途で利用されてきました。

• - 生活用品: 床に敷いて座ったり、寝具として使ったり、物を包んだりするのに用いられました。
• - 農業: 農作業の際に敷物として使われたり、収穫物を運ぶのに使われたりしました。
• - 建築資材: コンクリート打設時の湿潤養生資材、法面の被覆、緑化工事の材料など、建設現場でも幅広く用いられています。
• - 神事: 神社仏閣の祭礼や儀式で、神聖な場所を区切るために用いられます。

関連項目

• - ござ
• - 簀巻き
• - すだれ
• - 畳
• - こも巻き
• - 叺

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