菅谷昭

菅谷昭：医師、政治家、そして教育者としての生涯

菅谷昭氏は、1943年長野県生まれの医師、医学博士です。信州大学医学部卒業後、聖路加国際病院での研修を経て、信州大学医学部第二外科学教室に入局しました。その後、トロント大学留学を経て、甲状腺疾患の研究に携わりました。

菅谷氏のキャリアにおける転換期は、1991年に始まりました。チェルノブイリ原子力発電所事故の発生を受け、松本市のNGOによる医療支援活動に参加したのです。この活動は、菅谷氏の人生に大きな影響を与え、その後の人生を大きく変えることになります。

信州大学医学部助教授に就任するも、教授選考に漏れたことをきっかけに退局。しかし、その経験は、菅谷氏を新たな境地へと導きます。鎌田實氏らの勧めで、1996年からはベラルーシ共和国へ。ミンスクの国立甲状腺がんセンター、そしてゴメリ州立がんセンターにおいて、小児甲状腺がんの外科治療を中心とした医療支援活動を展開しました。チェルノブイリ原発事故による放射能汚染で苦しむ人々への献身的な医療活動は、ベラルーシ政府より勲章を授与されるほど高く評価されています。この活動は、NHKのプロジェクトXでも紹介され、広く知られるようになりました。

ベラルーシでの活動を経験した後、2001年に帰国。長野県衛生部医監、そして衛生部長に就任しました。同年には、吉川英治文化賞を受賞しています。

2004年、菅谷氏は松本市長選挙に出馬。日本共産党の支援を受け、現職を破り初当選を果たしました。その後、4期16年にわたり松本市長を務め、医療・福祉や子育て支援の充実を図るなど、多くの実績を残しました。市長在任中には、まつもと市民芸術館建設反対運動、そして多選による混乱など、幾多の困難にも直面しました。特に4選目の市長選では、直前まで引退を示唆しながらも出馬を表明し、史上最多の候補者数という異例の事態を招きました。

2019年11月、5選不出馬を表明。その後、2020年10月には松本大学学長に就任しました。教育者として新たな道を歩み始めた菅谷氏でしたが、2024年3月には任期満了に伴い退任。

菅谷氏の市長在任中には、新松本市立博物館建設問題での刑事告発という事件もありました。前市長と前副市長は市民団体から背任の疑いで刑事告発を受け、長野県警が受理しました。

2006年の長野県知事選挙では、田中康夫知事の再選阻止を目指した勢力から出馬要請を受けましたが、これを固辞しています。

菅谷氏は『真っ当な生き方のススメ』など、多数の著書を発表しています。ベラルーシでの医療支援活動の経験を基にした『チェルノブイリいのちの記録』や『チェルノブイリ診療記』は、多くの人々に感銘を与えました。

医師、政治家、教育者として、多方面で活躍した菅谷昭氏の生涯は、まさに波瀾万丈と言えるでしょう。彼の経験と功績は、多くの人々に深い影響を与え続けています。ベラルーシでの活動、松本市長としての功績、そして松本大学学長としての貢献、いずれもが、菅谷氏の人格と能力の高さを示しています。そして、その行動力と決断力は、後世に語り継がれるべきものです。

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