チェルノブ

チェルノブ：原子力発電所事故と、疾走する炭鉱夫

1988年、データイーストよりアーケードゲームとしてリリースされた『チェルノブ(CHELNOV)』。タイトル画面には「ATOMIC RUNNER CHELNOV 戦う人間発電所」の文字が躍り、その独特な世界観とゲーム性、そして物議を醸した設定で、多くのゲーマーの記憶に刻まれた作品です。

本作は、強制横スクロール型のアクションゲーム。プレイヤーは主人公チェルノブを操作し、謎の組織デスタリアンと戦います。アーケード版では炭鉱夫として描かれたチェルノブは、原子力発電所の爆発事故を生き延び、不思議な能力を身につけています。一方、メガドライブ版では、科学者として描かれ、妹の救出のために戦う物語が展開されます。

ゲーム性：止まらない疾走感

8方向レバーと3つのボタン（攻撃、ジャンプ、向きを変える）でチェルノブを操作します。画面は常に右へスクロールし続け、基本的には後退できません。まさに「レッツランニング」の名に相応しい、手に汗握る展開が続きます。ジャンプ中は後退が可能で、一部ボスステージでは前後移動も可能です。

多彩な武器：戦略性の高い戦闘

チェルノブは6種類の武器を使いこなします。初期装備の光子力光線はパワーアップで威力が向上し、エネルギーブーメランは独特な軌道で敵を攻撃します。光輪は範囲攻撃、電撃むちは貫通攻撃、重力分銅は威力が高いものの連射が難しいなど、それぞれの武器に特徴があります。さらに、誘導ミサイルである赤城山ミサイルは、往年の名作へのオマージュとも取れる、遊び心溢れる武器です。

個性的なステージ：異様な世界観

砂漠を走るピラミッドや、遮光器土偶に似たボスキャラクターなど、奇抜なステージデザインも本作の特徴です。古代文明の遺跡を思わせるステージや、暗色のアーケード版とは対照的なメガドライブ版の背景も印象的です。

移植版と関連作品：チェルノブの活躍はアーケードにとどまらず

『チェルノブ』はメガドライブ、X68000への移植版も存在します。メガドライブ版はストーリーやグラフィック、ステージ構成に大幅な変更が加えられ、アーケード版とは異なる魅力が味わえます。セガサターン版は開発途中で中止となっており、幻の作品となっています。

また、データイーストの作品にはチェルノブがゲスト出演する作品も存在します。『トリオ・ザ・パンチ』ではボスキャラクターとして、『ドラゴン忍者』では輸送コンテナの中に、『タンブルポップ』では雑魚敵として登場します。さらに、『ファイターズヒストリー ～溝口危機一髪!!～』では隠しキャラクターとしてプレイアブルキャラクターとなっています。

問題作としての側面：チェルノブイリ原発事故との関連性

本作は、そのタイトルや設定から、1986年のチェルノブイリ原発事故を想起させ、当時大きな批判を浴びました。タイトルの「チェルノブ」、ソ連国旗を思わせるシンボル、原子力発電所の事故という設定などが、社会的な問題を軽視しているとの非難が集中したのです。データイーストは「チェルノブは同社作品『カルノフ』の従兄弟という設定で、事故とは関係ない」と釈明しましたが、当時の世間の反応は冷ややかでした。

音楽：アーケード版とメガドライブ版の対比

『チェルノブ』のサウンドトラックは、アーケード版とメガドライブ版の楽曲を収録しており、独特の雰囲気を醸し出しています。特に、メガドライブ版のBGMはエスニックなテイストの楽曲が多く、ステージデザインとの相性の良さも注目すべき点です。

まとめ：問題作でありながら、多くのゲーマーを魅了した作品

『チェルノブ』は、その設定やゲーム性、そして様々な移植版や関連作品を通じて、多くのゲーマーに強い印象を与えた作品です。チェルノブイリ原発事故というセンシティブなテーマを扱ったことで批判を浴びたものの、独特の世界観とゲーム性によって、今日でも語り継がれる問題作として存在感を示しています。その背景や開発秘話、そして音楽の魅力を深く掘り下げることで、本作が持つ多面的な魅力を再認識することができるでしょう。

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