菅野圭介

菅野圭介：シンプルで力強い画風と波乱の生涯

菅野圭介（1909年4月27日 - 1963年3月4日）は、20世紀日本の洋画壇に独特の足跡を残した画家です。東京都新宿区に生まれ、父は早稲田大学で英語文学を教える教員でした。17歳頃から油絵を描き始め、京都帝国大学（現・京都大学）に進学しますが、学業には身を入れず、下宿で絵を描くことに没頭しました。大学を除籍された後、画家としての道を本格的に歩み始めます。

1936年には第6回独立美術協会展に入選し、以後、独立美術協会を拠点に活躍しました。特徴は、筆致を残しつつもシンプルで洗練された構成の画風。奔放な作風でありながら、画面からは確固たる意志が感じられます。彼の作品は、一見すると簡素な表現に見えますが、そこには長年の研鑽と深い洞察が凝縮されていると言えるでしょう。

菅野は、活動初期からヨーロッパ各地を巡遊し、多様な文化や風景からインスピレーションを得て作品制作に励みました。その旅の経験は、彼の作品に深みと広がりを与えたことは間違いありません。また、画家仲間との交流も盛んで、特に画家三岸節子とは1948年から1953年まで事実上の婚約関係にありましたが、破局を迎えています。その後、須藤美玲子と結婚しています。オーディオ評論家として知られる菅野沖彦は、彼の甥にあたります。

晩年、菅野は「ワンパターン」との批判に晒されることになります。画商との関係が悪化し、自身の作品を直接販売するようになるなど、苦境を強いられました。1963年、食道がんのため慶應病院で死去。最期まで創作への情熱を失わず、病室の天井に白い紙を貼り、そこにイメージで絵を描いていたという逸話は、彼の芸術に対する揺るぎない情熱を示しています。死後、しばらくの間は美術界から忘れられた存在となりますが、その後、複数の美術コレクターらの尽力により再評価の機運が高まりました。

1990年、没後27年を経て大川美術館で展覧会が開催されたのを皮切りに、平塚美術館、東御市梅野記念絵画館・ふれあい館、北九州市門司税関など各地で企画展が開催され、現在では多くの美術館に作品が収蔵されています。菅野圭介の作品は、そのシンプルながらも力強い表現、そして波乱に満ちた作家の生涯と相まって、見る者に深い感動を与え続けています。彼の作品は、日本の近代美術史において重要な位置を占め、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

主な収蔵館

東御市梅野記念絵画館・ふれあい館
府中市美術館
* その他多数

もう一度検索