菊岡沾涼

菊岡沾涼（きくおか せんりょう）

菊岡沾涼（1680年 - 1747年）は、江戸時代中期の俳人であり、作家としても知られています。本名は房行、通称は藤右衛門。崔下庵、南仙、米山といった別号も用いました。

生涯

生い立ちと家業

延宝8年（1680年）7月、伊賀国（現在の三重県伊賀市）に生まれました。実家は造り酒屋でしたが、母方の親戚である菊岡家の養子となり、名を房行と改めます。後に分家し、江戸へ出て藤右衛門と名乗り、神田鍛冶町で売薬業を営みました。家伝の婦人薬「女宝丹」や二日酔い薬「清酲散」を販売し、生計を立てていました。

俳諧への傾倒

俳諧の世界には、芳賀一晶に師事して「南仙」と号したのが始まりでした。その後、内藤露沾に師事し、「沾涼」と号するようになります。江戸座を中心に精力的な俳諧活動を展開し、多くの俳句作品を発表しました。享保2年（1717年）には、絵俳書『百福寿』に参画。また、三世立志とも交流し、江戸座の歳旦集にも句を寄せています。

俳壇での孤立と地誌編纂

露沾の死後、俳壇は譬喩俳諧が主流となり、沾涼の枯淡な俳風は時代と合わなくなります。後継者である貴志沾洲と対立し、江戸座の中で孤立を深めました。しかし、享保17年（1732年）に刊行した地誌『江戸砂子』が評判を呼び、作家としての名声が高まります。また、『綾錦』では俳諧の系譜を論じましたが、沾洲派を軽視する内容であったため、物議を醸しました。

晩年と死

晩年は、俳諧紀行で得た見聞をもとに、地誌や説話集の執筆に力を注ぎました。松尾芭蕉回帰の動きにも関わることなく、独自の道を歩みました。延享4年（1747年）10月24日、死去。辞世は「葉は茎はよし枯るとも薄の根」。浅草の誓願寺林宗院に葬られたとされますが、墓所の所在は不明です。しかし、実家である飯束家の菩提寺、伊賀上野の法林寺には沾涼の墓が現存しています。

死後、同業の俳人であった北村東巴が二世沾涼、金工の菊岡光行が三世沾涼を名乗りました。

主な作品

『百福寿』（1717年）
『続福寿』（1720年）
『百華実』（1722年）
『綾錦』（1727年）
『鳥山彦』（1736年）
『菊岡沾涼誹諧巻』（1746年）
『藻塩袋』（1743年）
『反古談』（1705年）
『歳旦詩附俳諧集』
『三十六番句合』
『日本道中行程記』（1722年）
『日光道中行程記』（1727年）
『故郷の水』（1733年）
『江戸砂子』（1732年）
『続江戸砂子温故名跡志』（1735年）
『熱海志』（1744年）
『本朝世事談綺』（1734年）
『諸国里人談』（1743年）
『本朝俗諺志』（1747年）
『奈良土産』
『奈良土産続編』
『回国筆みやけ』

家族

実父：飯束瀬左衛門政安
実祖父：飯束喜三
実兄：飯塚瀬左衛門
養父：菊岡市右衛門行尚
養祖父：菊岡市左衛門行宜
義弟：菊岡行重
義弟：菊岡行国有隣
妻：美保
長男：菊岡藤兵衛晴行
孫：菊岡利藤次光行
* 次男：菊岡伝右衛門梅五

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