菊間瓦

菊間瓦とは

菊間瓦は、愛媛県今治市の菊間地区で生産されている瓦です。その歴史は古く、数百年にわたり受け継がれてきた伝統工芸品です。特徴的なのは、その製法と、焼き上げによって生まれる独特のいぶし銀の光沢です。また、鬼瓦の生産も盛んに行われています。

材料と製法

菊間瓦の材料には、香川県産のさぬき土と、菊間町産の五味土が用いられます。それぞれの土は、粒度や鉱物組織、含水率などが異なるため、安定した原土を作るために、機械で粉砕し、水分を調整しながら練り合わせます。

原土のねかし

配合した原土は、すぐに成形するのではなく、「ねかし」という工程を行います。これは、土の勢いを落ち着かせ、安定した状態にするためのもので、約10日間、土を覆って寝かせます。

荒地の形成

ねかした原土は、真空土練機で空気を抜いた後、瓦の形に成形されます。この成形前の粘土を「荒地」と呼びます。現在では、町内の瓦業者の多くが共同で荒地を生産し、各事業所に配送しています。

プレス成形

配送された荒地は、再度ねかした後、プレス機で瓦の形に成形されます。機械で成形できない特殊な瓦は、瓦師が手作業で成形します。この手作業による技術は、菊間瓦の大きな特徴の一つです。

みがき

成形した瓦は、表面を磨く「みがき」という工程を行います。これにより、瓦のゆがみを防ぎ、表面の光沢を増すことができます。この工程も、手作業で行われる伝統的な技術です。

乾燥

磨かれた瓦は、約5日間、陰干しで乾燥させます。急激な乾燥は瓦の品質を低下させるため、窯の余熱を利用するなど、自然に近い状態で水分を抜きます。十分に乾燥した瓦は「白地」と呼ばれます。

焼成

乾燥した瓦は、ガス窯で焼成されます。約1000～1050℃の高温で焼き上げられ、約20時間密閉していぶされます。このいぶす工程で、菊間瓦独特のいぶし銀の光沢が生まれます。

検査・出荷

焼き上がった菊間瓦は、一枚一枚丁寧に検査されます。強度、寸法、曲げ、いぶし色、吸水性などが厳しくチェックされ、合格した製品のみが出荷されます。品質の高い菊間瓦は、愛媛県から伝統的特産品の指定を受けています。

菊間瓦の歴史

菊間瓦は、伊予と呼ばれていた時代から続く伝統工芸品です。明治時代には最盛期を迎えましたが、その後衰退しました。しかし、近年では、菊間瓦の博物館「かわら館」が開設されたり、瓦のふるさと公園で装飾に使われたり、遍照院の鬼瓦御輿に使われたりするなど、今治市では町おこしに活用されています。

また、近年では桜井漆器とのコラボレーションにより、新たな商品開発も行われています。2007年には地域団体商標を取得し、そのブランド力を高めています。

まとめ

菊間瓦は、伝統的な製法と美しいいぶし銀の光沢が特徴の瓦です。その技術は、現代にも受け継がれ、地域おこしにも活用されています。今後も、その魅力を多くの人に伝えていくことが期待されます。

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