菊間町

菊間町の概要

菊間町は、愛媛県の東予地方、越智郡に位置していた町です。旧野間郡に属し、2005年1月には今治市との合併により、新たな今治市の一部となりました。古くから菊間瓦の生産地として知られ、太陽石油の事業所も立地するなど、工業製品の出荷額も多い地域でした。

地理

菊間町は、松山市と今治市の中間に位置し、今治市の最西端にあたります。地形的には急峻な山はなく、なだらかな丘陵地が広がっており、みかんの果樹園や里山として利用されていました。主要な集落は、海岸沿いを走る国道196号線やJR予讃線沿線、および菊間川とその支流の中下流域に形成されていました。

気候は温暖で降水量が少なく、台風などの災害も少ない地域でした。

歴史

藩政期

菊間町は、松山藩に属し、宿場町として発展しました。17世紀半ばには、浜村を中心に商工業が盛んに行われていました。1777年には、浜村の製瓦業者によって株仲間が結成され、菊間瓦の生産が本格化しました。瓦の生産は、河野氏の統治時代から行われていたとされていますが、松山藩の保護のもとでさらに発展しました。1863年には、松山藩が幕府の命により沿岸防衛のために砲台を設置し、住民が徴用されました。また、長州征討の際には、船と住民が徴用されました。

明治以降

1902年（明治35年）には柑橘栽培が導入され、1941年（昭和16年）には葉山海岸に太陽石油の製油所が建設されました。1950年（昭和25年）には、昭和天皇のお召し列車が菊間駅に5分間停車し、駅前で歓迎行事が行われました。1965年（昭和40年）には、ミカンの生産がピークを迎え、養豚と並ぶ農業の柱となりました。

沿革

1889年（明治22年）12月15日には、町村制の施行により、菊間川流域の下流に位置する西山村、長坂村、浜村が合併し、野間郡菊間村となりました。同時に、池原村、高田村、松尾村、河之内村、川上村、中川村が合併して歌仙村、佐方村と種村が合併して亀岡村が成立しました。1897年（明治30年）4月1日には、野間郡が越智郡に統合されました。

1908年（明治41年）には町制が施行され、菊間町となりました。1920年（大正9年）には、今治自動車商会が今治〜菊間間で定期バスの運行を開始しました。1925年（大正14年）には歌仙村を合併し、讃予線伊予大井駅〜菊間駅間が開通、伊予亀岡駅と菊間駅が開業しました。1927年（昭和2年）には讃予線菊間駅〜伊予北条駅間が開業しました。1955年（昭和30年）には亀岡村と合併し、現在の菊間町の領域となりました。

その後、1970年代から1990年代にかけて、住宅団地や産業振興センター、文化施設などが整備され、町としての発展を遂げました。しかし、2005年（平成17年）1月16日には、今治市との合併により、自治体としての菊間町は消滅しました。

行政

菊間町は、合併前には隣接する大西町、波方町とともに越智郡陸地部の西側に位置していました。合併の際、当初はこれらの3町で合併する案も検討されましたが、最終的には今治市を中心とした合併協議会に合流しました。

産業

菊間町の主要産業は、石油精製、菊間瓦の製造、そして柑橘栽培を中心とした農業です。海岸の埋め立てによって工業用地が確保され、太陽石油の事業所が立地しました。また、菊間瓦は、いぶし銀の風合いで知られ、国道196号線沿いには多くの瓦工場が立ち並んでいました。農業では、温暖な気候を生かして古くから柑橘栽培が行われてきましたが、大規模な銘柄産地には至っていません。

水産業では、チリメンなどの沿岸漁業が行われ、菊間港が主要な漁港でした。商業は、旧菊間町中心部に商店街がありましたが、松山や今治への購買力の流出が課題となっていました。また、海運業は、もともと菊間瓦の燃料や製品を運ぶ必要から始まったとされており、現在でも船主が若干集積しています。

地域

教育

菊間町には、今治市立菊間小学校、今治市立亀岡小学校、今治市立菊間中学校がありました。

文化

菊間町には、加茂神社の秋の祭礼をはじめとする、伝統的な祭りや行事が多く残っています。加茂神社の祭礼では、お供馬の走り込みや継獅子などの出し物、神輿と牛鬼が繰り出します。牛鬼は、東予地方では菊間のみに登場する珍しいものです。西山地区では、客神社の弓祈祷が行われます。その他、亥の子やひるめさん盆踊りなどの行事も行われていました。

交通

菊間町へは、国道196号線やJR予讃線を利用することが一般的でした。鉄道は、JR予讃線の伊予亀岡駅と菊間駅が利用されていました。道路は、国道196号線と愛媛県道164号線が主要な道路でした。

観光

菊間町には、歌仙の滝、歌仙ダム、霧合の滝、高仙城跡、松山シーサイドカントリー（ゴルフ場）、瓦のふるさと公園、加茂神社、かわら館、ひるめ地蔵（比留女地蔵）、客神社、厳島神社境内にある日支連絡船長崎丸の船長、菅源三郎の銅像、掌禅寺の金龍桜などの観光名所がありました。また、菊間夏祭りなどのイベントも開催されていました。

特産品

菊間町の特産品としては、菊間瓦（干支の置物など）、みかん、小魚、鬼瓦もなか、水産練製品（ちくわ、すまきなど）などがありました。

関連作品

野村昇司の『祭りの朝』は、菊間町を舞台にした作品です。

参考文献

菊間町（1979年）『菊間町誌』
菊間町（2004年）『菊間町誌（続編）』

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