華北政務委員会

華北政務委員会

華北政務委員会（かほく-せいむいいんかい）は、第二次世界大戦期に中国の華北地域に存在した行政機構です。1940年3月30日に成立し、その前身は中華民国臨時政府でした。臨時政府が汪兆銘を首班とする南京の「中華民国国民政府」（通称：汪兆銘政権）に合流・参加する形で、華北政務委員会へと改編されました。

概要

この組織は、汪兆銘政権からの委託を受け、制定された『華北政務委員会組織条例』に基づき運営されました。管轄区域は、河北省、山東省、山西省の3省と、北京、天津、青島の3市に及び、これらの地域の防共対策、治安維持、経済政策の実行を汪兆銘政権の代行として行い、管轄下の省や市を監督することを任務としていました。条例には明記されていませんでしたが、実際には河南省の行政実務も華北政務委員会が担っていました。ただし、1942年1月には蘇北淮北地区が蘇淮特別区行政公署として再編され、汪兆銘政権の直轄へと移行しています。

組織構成

華北政務委員会の委員は17名から21名で構成されました。その中から1名が委員長に、5名から9名が常務委員に選ばれました。委員の下には、業務を補佐する顧問、参議、咨議、専員、調査員がそれぞれ複数名配置されていました。

歴代の委員長には、王克敏（1940年3月～6月、1943年7月～1945年2月）、王揖唐（1940年6月～1943年2月）、朱深（1943年2月～7月）、王蔭泰（1945年2月～8月）といった人物が名を連ねています。

行政機構

華北政務委員会は、実務を遂行するために様々な直属機関を設けました。

設立初期（1940年3月～1943年11月）

設立から1943年11月にかけては、主に六つの総署と二つの庁、そして最高法院華北分院が置かれました。総署には、内政、財政、治安、教育、実業、建設がありました。庁には、政務庁と秘書庁が設けられていました。最高法院華北分院も、事実上は政務委員会の管轄下にありました。

各総署には督弁と署長が置かれ、その下に複数の局が配されました。例えば、内務総署には総務、民政、礼俗、衛生の各局があり、後に警政局も加わりました。代表的な督弁として、内務総署を兼任した斉燮元や、財務総署の汪時璟らがいます。

機構改革後（1943年11月～1945年8月）

1943年11月10日の機構改革により、行政機構は再編されました。政務庁と秘書庁は廃止され、総務庁、内務庁、財務庁の三庁が新たに設置されました。また、総署は治安（後に綏靖と改称）、経済、農務、教育、工務の五つに再編されました。

再編後の庁にも庁長や次長が置かれ、その下に複数の局が配置されました。例えば、総務庁には総務、外務、統計、情報の各局が置かれました。総署も引き続き督弁や署長を置き、下部に局を配しました。治安総署は1943年12月30日に綏靖総署と改称されました。代表的な責任者として、総務庁長や内務庁長を兼任した王蔭泰、綏靖総署督弁の杜錫鈞、経済総署督弁の汪時璟らがいます。最高法院華北分院は引き続き存続しました。

諮問機関

1942年3月30日、当時の委員長であった王揖唐により、諮詢会議という諮問機関が創設されました。これは委員長の諮問に応じるほか、決議に基づいて政務委員会に建議を行う役割を担いました。在野の元老や有力者を政治に協力させる体制を整える目的がありました。専任委員は7名で、政務委員会の委員長や常務委員も構成員となりました。初期の専任委員には王克敏、龔心湛、靳雲鵬、呉毓麟、章宗祥、曹汝霖、張鳴岐らがいました。

行政区画と外交

汪兆銘政権の崩壊直前、華北政務委員会の管轄下にあった主な行政区域は、北京市、天津市、青島市の3市と、河北省、山東省、山西省、河南省の4省でした。

外交面では、日本、満洲国、タイ、ドイツ国といった国々から大使級の代表者が派遣されていました。

華北政務委員会は、日本の占領下における華北地域の行政を担う傀儡政権としての性格を有し、その存続は汪兆銘政権と運命を共にしました。

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