紛争鉱物

紛争鉱物とは

紛争鉱物とは、武力紛争や内戦によって、人権侵害を引き起こしている地域で採掘される天然資源のことを指します。これらの鉱物は、武装勢力や反政府組織の資金源となっており、紛争を長期化させる要因の一つとなっています。

紛争鉱物の現状

特に問題視されているのは、アフリカのコンゴ民主共和国（旧ザイール）およびその周辺9ヶ国（コンゴ共和国、アンゴラ、ザンビア、タンザニア、ブルンジ、ルワンダ、ウガンダ、南スーダン、中央アフリカ）で産出される鉱物資源です。この地域では、鉱物利権をめぐって第二次コンゴ戦争が勃発し、2003年に終結したものの、その後も多くの武装勢力が入り乱れて争いが続いています。

この紛争地帯では、鉱山での過酷な強制労働や女性への性的暴力など、深刻な人権侵害が多発しています。武装勢力は、スズ（Tin）、タンタル（Tantalum）、タングステン（Tungsten）、金（Gold）といった鉱物を採掘・売買することで資金を得ており、これらの4つの鉱物は「3TG」と呼ばれています。

3TGは、携帯電話、コンピューター、航空機のエンジン部品、電子機器など、私たちの生活に欠かせない様々な製品に使用されています。非常に広義に捉えると、3TGが使われた工業製品の消費者も、結果として紛争地域の武装勢力の資金を増やし、人権侵害に加担している側面があると言えます。

国際的な取り組み

このような現状を踏まえ、紛争鉱物の使用を避ける、または使用率を減らす動きが国際的に広がっています。アメリカ合衆国では、2010年にドッド・フランク法が制定され、株式市場に上場する企業に対して、3TGの供給源などの情報開示が義務付けられました。この法律は2013年から施行され、アメリカ国内外の約6,000社に影響を与えています。

ドッド・フランク法では、紛争鉱物の使用自体を禁止しているわけではありませんが、製品に紛争鉱物が含まれていることを公表すると、国際的な不買運動の標的となる可能性があります。そのため、企業は業績への影響を避けるために、紛争鉱物の使用を控えるようになり、結果的に武装勢力への資金流入が減少し、人権侵害の抑制につながると期待されています。

私たちにできること

紛争鉱物の問題は、複雑で根深い問題ですが、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、倫理的な消費を心がけることが重要です。製品を選ぶ際には、その製品がどのように作られたのか、紛争鉱物が使用されていないかなどを意識してみましょう。

また、紛争鉱物問題に取り組む企業を応援したり、関連する団体に寄付をしたりすることも、間接的に問題解決に貢献することができます。私たち一人ひとりの小さな行動が、より良い未来を築くための大きな一歩となるはずです。

参考資料

デロイトトーマツ紛争鉱物対応チーム『ここが知りたい 米国紛争鉱物規制』日刊工業新聞社、2013年。
KPMG、あずさ監査法人『紛争鉱物規制で変わるサプライチェーン・リスクマネジメント』東洋経済新報社、2013年。

関連項目

紛争ダイヤモンド
レアメタル

外部リンク

* 『紛争鉱物』 - コトバンク

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