菱村幸彦

菱村幸彦

1934年（昭和9年）11月9日生まれ。日本の元文部官僚であり、教育行政学者、教育評論家として知られます。岐阜県高山市の出身です。

経歴

京都大学法学部を1959年（昭和34年）に卒業後、文部省に入省しました。省内では、教科書検定課長、高等学校教育課長、初等中等教育局審議官といった要職を歴任し、特に初等中等教育分野の行政に深く関わりました。1988年（昭和63年）には総務審議官、次いで初等中等教育局長に就任し、日本の教育行政の中枢で重要な役割を果たしました。

文部省を1991年（平成3年）に退官した後は、教育界の様々な立場でその経験と知見を活かしました。放送大学学園監事を務めた後、1993年（平成5年）には国立教育研究所長に就任しました。さらに、駒場東邦中学校・高等学校長、学校法人清真学園理事長として学校運営に携わり、財団法人学習ソフトウエア情報研究センター理事長、日本図書教材協会会長といった関連団体の要職も歴任するなど、幅広い分野で教育振興に貢献しました。

研究・評論活動

長年の文部官僚としての実務経験に加え、教育行政学者、教育評論家として、特に教育法規、学校経営、生徒指導、教員研修、戦後教育史といったテーマについて、多岐にわたる研究や評論活動を行いました。これらの活動を通じて、学校現場の実務に即した法的知識の普及や、教育行政の課題に対する提言を積極的に行いました。

主な著作

教育に関する深い洞察と実務経験に基づき、多くの著作を発表しています。特に教育法規や学校経営に関するものが多数を占め、教育関係者にとって実践的な手引きとなるものが多く見られます。主な単著および共編著の一部を以下に挙げます。

単著

『教科書裁判』（新教育懇話会、1975年）
『教育課程の法律常識 教育指導の法的理解のために』（第一法規出版、1976年）
『生徒指導の法律常識』（第一法規出版、1977年）
『教師のための法律常識』（第一法規出版、1979年）
『やさしい教育法規の読み方』（教育開発研究所、1983年）
『法律からみた学校経営のノウハウ』（教育開発研究所、1989年）
『戦後教育の功罪を問う』（明治図書出版、1993年）
『教育行政から見た戦後高校教育史 高校はどう変わったか』（学事出版、1995年）
『私の校長学 実践に活かす学校経営の知恵と技』（学事出版、2002年）
『戦後教育はなぜ紛糾したのか』（教育開発研究所、2010年）
『管理職のためのスクール・コンプライアンス ここが問われる学校の法的責任』（ぎょうせい、2010年）

共編著

『教科書の話題』（浦山太郎共著、第一法規出版、1974年）
『高等学校新教育課程の解説』（編著、ぎょうせい、1978年）
『生徒指導実務必携』（堀久共編著、第一法規出版、1978年）
『教育法規大辞典』（下村哲夫共編、エムティ出版、1994年）
『教職研修総合特集 学校の法律常識』全6巻（責任編集、教育開発研究所、1997-98年）
『教育行政』（編著、ぎょうせい、1997年）
『身近な話題で学ぶやさしい教育法規』（下村哲夫共著、学事出版、2000年）
『教育法規』（坂田仰共編、学事出版、2011年）
『コンパクト教育法規ハンドブック 校長・副校長・教頭が心得ておくべき学校運営規準』（編、教育開発研究所、2011年）
* 『いじめ・体罰防止の新規準と学校の対応 いじめ防止対策推進法・体罰防止の新規準に基づく学校づくり』（編集、教育開発研究所、2013年）

これらの著作は、日本の教育行政や学校現場が直面する様々な課題に対し、法的な側面からの分析や具体的な対応策を示すものであり、多くの教育関係者に影響を与えました。文部官僚、研究者、実務家という多角的な視点から日本の教育に貢献した人物といえます。

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