菱田重禧

菱田重禧：激動の時代を生きた多才な人物

菱田重禧（ひしだ しげよし）は、1836年に美濃国で生まれ、幕末から明治にかけて活躍した人物です。大垣藩士、漢詩人、官僚、裁判官という多様な顔を持ち、激動の時代を駆け抜けました。その生涯は、日本の近代化を語る上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

若き日の研鑽と藩での活躍

菱田は、大垣藩の侍講を務めた菱田清次の六男として誕生しました。幼少の頃から漢詩に親しみ、その才能を開花させます。1853年には江戸に遊学し、安積艮斎の門下で学びました。一時帰郷したものの、再び江戸に出て学問に励み、その後、藩校の教官として、また評定役兼侍講として藩に貢献しました。

1866年には、小原鉄心に従い江戸へ。第二次長州征討の際には帰郷する小原に従い、大垣藩の兵を率いて上洛。鳥羽・伏見の戦いでは、旧幕府方として参戦した大垣藩兵に対し、官軍への発砲をしないよう説得を試みるも、時すでに遅く、戦端は開かれていました。さらに、長州藩士に捕えられ、処刑されそうになるという危機に瀕しましたが、隊長の機転により命拾いをしました。その後、藩論を勤皇へと転換させるという重要な役割を果たしました。

明治維新後の官僚としての活躍と苦悩

明治維新後、菱田は明治政府に出仕し、徴士・総裁局史官に就任します。その後も、明治天皇の東京行きに扈従するなど、政府の中枢で活躍しました。学校取調御用掛兼勤、教導局御用掛兼勤、待詔局御用掛専務、諸藩建白取調掛、大史、記録編輯専務、按察権判官、兼民部権大丞といった要職を歴任し、その手腕を発揮しました。

1870年には、第一次福島県権知事に就任。翌年には青森県権令に転任しますが、急進的な政策により、野田豁通権参事や弘前士族との対立を招き、県政は停滞。その責任を問われ、免本官となり、位記を返上することになりました。その後、文部省や司法省で官僚として活動し、裁判官としてもキャリアを積みました。

晩年と著作

官僚を辞した後は、文部省御用掛や宮内省御用掛を歴任し、1885年に非職となりました。晩年は、北豊島郡巣鴨村に移り住み、1895年に病のためこの世を去りました。著書には、『海鴎詩刺』や、没後に編纂された『海鴎遺稿』などがあります。

まとめ

菱田重禧は、幕末から明治という激動の時代を、藩士、漢詩人、官僚、裁判官として多方面で活躍した人物です。その生涯は、日本の近代化を語る上で重要な要素であり、彼の残した業績は、後世に大きな影響を与えました。激動の時代の中で、自身の信念を貫き、様々な困難に立ち向かった彼の生き様は、現代を生きる私たちにとっても、大いに学ぶべき点があると言えるでしょう。

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