萩原朔美

萩原朔美（はぎわら さくみ）は、1946年11月14日生まれの日本の映像作家、演出家、エッセイストであり、多摩美術大学名誉教授、前橋文学館館長を務めています。旧姓は大塚で、小説家でダンサーの萩原葉子を母に、詩人の萩原朔太郎を母方の祖父に持ちます。

生い立ちと演劇活動

東京都で生まれ、日本大学櫻丘高等学校を経て日本大学芸術学部文芸学科を中退。学生時代からジャズ喫茶でのアルバイトを通じ、1967年に寺山修司が主宰する演劇実験室「天井桟敷」に参加しました。同劇団の旗揚げ公演『青森県のせむし男』で初舞台を踏み、その後『毛皮のマリー』での美少年役が大きな話題となりました。

俳優活動後、1968年には『新宿のユリシーズ』で演出家としてのキャリアをスタート。以後、『書を捨てよ町へ出よう』や『時代はサーカスの象にのって』など、数々の作品を演出しました。1969年には、自身が出演した『毛皮のマリー』を演出、国際実験演劇祭に招待されるなど、海外からも高い評価を得ています。

映像制作への転身

演劇活動と並行して映像制作も開始。1970年に天井桟敷を退団後は、時間や記憶をテーマにした実験的な映像作品を精力的に制作しました。山口勝弘や中谷芙二子らと共にビデオアートの分野を切り開き、その作品は世界各地で上映されています。

1973年にはアメリカ国務省の招聘で渡米し、帰国後にはビデオアートに関する講演を行うなど、メディアアートの普及にも貢献しました。1974年には株式会社エンジンルームを設立（後に解散）、雑誌『ビックリハウス』の初代編集長を務め、パルコ文化や渋谷系サブカルチャーの隆盛を牽引しました。

教育者としての活動

1978年よりイメージフォーラム映像研究所講師を務め、後進の育成にも尽力しています。1981年には多摩美術大学の非常勤講師となり、その後、専任講師、助教授、教授を経て、2017年に定年退職。多摩美術大学生涯学習センター長や造形表現学部長も歴任しました。

近年の活動

2016年には前橋文学館館長に就任。2022年には世田谷美術館に版画、写真、アーティストブックなど120作品が収蔵されました。2023年7月には前橋市文化芸術活動顧問に就任するなど、現在も精力的に活動を続けています。

多様な才能と人物像

1980年前後からは空手を趣味とし、飲み仲間たちと空手愛好会を設立。また、自身の体験を基にしたウェブエッセイ『加齢黄斑変性になった』や『定点観測のすすめ』を連載するなど、エッセイストとしての才能も発揮しています。萩原朔美は、その多才な才能と活動を通じて、日本の現代アートシーンに多大な影響を与え続けています。

主な舞台作品

『青森県のせむし男』(1967) - 出演
『毛皮のマリー』(1967) - 出演
『新宿のユリシーズ』(1968) - 演出
『時代はサーカスの象にのって』(1969) - 演出
『書を捨てよ町へ出よう』(1969) - 演出

主な映像作品

『少年探偵団』(1968)
『TIME』(1971)
『SHOWER』(1971)
『KIRI』(1972)
『COMMUNING』(1973)
『映像書簡』シリーズ (1979-2010)
『目の中の水』シリーズ (2012-2014)

主な著書

『赤い自転車』(1974)
『時間を生け捕る』(1976)
『定点観測 メディアの幻と夢の企画書』(1987)
『思い出の中の寺山修司』(1992)
『死んだら何を書いてもいいわ』(2008) - 萩原葉子について
『劇的な人生こそ真実—私が逢った昭和の異才たち』(2010)

萩原朔美の活動は、演劇、映像、文筆、教育と多岐にわたり、その独創的な視点と表現は多くの人々に影響を与え続けています。

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