萬弘寺 (大分市)

萬弘寺：大分県最古の寺院と、歴史を紡ぐ「萬弘寺の市」

大分県大分市坂ノ市に位置する萬弘寺は、臨済宗妙心寺派の寺院です。廣徳山を山号とし、現存する寺院としては大分県内最古の歴史を誇ります。毎年5月に行われる「萬弘寺の市」は、地域住民にとって欠かせないイベントとして親しまれており、萬弘寺の歴史と深く結びついた、魅力あふれる寺院です。

古代からの歴史と伝説

寺伝によれば、萬弘寺の創建は飛鳥時代まで遡ります。用明天皇が九州巡幸の際に当地で病に倒れられましたが、豊国法師の薬師如来像による加持祈祷によって回復されました。この奇跡をきっかけに、病気平癒の祈願所として創建されたと伝えられています。その後、用明天皇の皇子であった聖徳太子が、父である用明天皇の追善供養のため、7世紀に7つの堂からなる大伽藍を建立したとされています。この大伽藍の建立は、萬弘寺が当時、いかに重要な寺院であったかを示す証左と言えるでしょう。

萬弘寺の門前では、創建当時から市が開かれていたとされ、7世紀中には定期市としての形を整えていたと考えられています。このことから、萬弘寺が地域社会の中心として、経済活動においても重要な役割を果たしていたことが分かります。

戦乱と災害、そして復興

しかし、長い歴史の中で萬弘寺は幾度となく戦乱や災害に見舞われ、荒廃の一途を辿りました。しかし、その度に人々の努力によって再建され、今日までその歴史と伝統を受け継いできました。現在の本堂は1966年（昭和41年）に建立され、その後、庫裏や薬師堂などが整備され、現在の姿となりました。宗派は創建当時とは異なっていますが、歴史と信仰の灯を絶やすことなく現代に受け継がれている点は特筆に値します。

萬弘寺の市：地域を繋ぐ伝統行事

萬弘寺の市は、本尊である如意輪観世音菩薩の縁日にあたる5月18日から1週間、毎年開催されています。かつては寺周辺に「門前」「古屋敷」「寺の跡」「寺の背」「本願寺」「中の島」といった地名が存在したと伝えられていますが、現在は地名としては残っていません。これらの地名は、かつて萬弘寺とその周辺地域が、人々の生活と深く結びついた場所であったことを物語っています。

現在も盛大に開催されている萬弘寺の市は、地域住民にとって重要な交流の場であり、歴史と伝統を繋ぐ重要な行事となっています。多くの露店が並び、賑やかな雰囲気の中で、地域独特の文化に触れることができます。

交通アクセス

萬弘寺へのアクセスは良好です。JR日豊本線坂ノ市駅から徒歩10分、東九州自動車道大分宮河内ICからは車で10分と、公共交通機関、マイカーどちらを利用しても容易に訪れることができます。

萬弘寺は、歴史と伝統、そして現代の息吹が感じられる、魅力的な寺院です。大分を訪れた際には、ぜひ足を運んで、その歴史と文化に触れてみてください。

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