落合重信

落合重信：神戸の歴史と人権を見つめた郷土史家

落合重信（1912年10月 - 1995年2月15日）は、神戸市を中心に活動した郷土史家です。彼は、神戸市や兵庫県の歴史はもとより、被差別部落の歴史、在日朝鮮人史といった、社会的に周縁化されがちなテーマにも光を当て、研究しました。

生涯

落合重信は三重県四日市市で生まれましたが、幼少期に神戸に移り住みました。旧制中学を中退後、夜間中学を経て学問を修めました。

職歴としては、神戸市立図書館を皮切りに、兵庫県庁、商工会議所、神戸市役所と様々な場所で勤務しました。最終的には神戸市史編集室で定年を迎えています。

研究活動においては、神戸史学会の代表を務めたほか、神戸電鉄敷設工事中に亡くなった朝鮮人犠牲者を調査し、追悼する会の代表も務めました。1995年2月15日、肝臓癌のため82歳で逝去。

被差別部落への関心

落合重信が被差別部落に関心を抱くようになったきっかけは、神戸市の社会教育課で青年団を担当していた頃の経験にあります。当時、番町青年団に出入りする中で、駐在巡査による差別事件を目の当たりにし、強い衝撃を受けたといいます。

その後、番町青年団員から地域の歴史を著してほしいと依頼を受け、『神戸市長田区番町部落史稿』（タイプ版、昭和30年）を刊行。また、神戸市教育委員会からの依頼で部落史を執筆した際には、部落問題研究所の『やさしい部落の歴史』などを参考にしたと述べています。しかし、次第に同研究所が発行する「部落史」を批判的に見るようになったと自己分析しています。

著書

落合重信は、数多くの著作を通じて、神戸の歴史や文化、そして社会問題について考察を深めました。以下は、彼の主要な著書の一部です。

『神戸和歌史』 上崎書店 1942年5月
『神戸史話』共著・有井 基、創元社、1967年7月 ISBN 978-4-422-25003-8
『条里制』吉川弘文館、1968年1月 ISBN 978-4-642-06517-7
『書名主記入論』日本図書館研究会、1970年
『未解放部落の起源―近世皮多部落形成過程の研究』神戸学術出版 東京 小宮山書店、1973年
『近世国学者による図書館設立運動―図書館関係論文集(歴史・分類・書誌)』神戸学術出版 東京 小宮山書店、1975年
『神戸の歴史―古代から近代まで』後藤書店、1975年
『埋もれた神戸の歴史』神戸史学会出版部 （コーベブックス）、1977年1月
『神戸の歴史　研究編』後藤書店、1980年
『部落の起原』兵庫部落問題研究所、1981年1月 ISBN 978-4-89202-006-3
『地名にみる生活史 ― 兵庫県の地名　神戸市の地名』兵庫新書／神戸新報社、1981年4月
『ひょうご地名考』後藤書店、1983年1月 ISBN 978-4-906099-04-7
『地名研究のすすめ』国書刊行会、1983年1月 ISBN 978-4-336-01302-6
『ひょうごの地名再考 ― 足もとの歴史発掘』神戸新聞総合出版センター、1988年11月 ISBN 978-4-87521-672-8
『神戸の歴史　通史編』地方小出版流通、1989年3月 ISBN 978-4-906099-05-4
『近世部落の中世起原』明石書店、1992年6月 ISBN 978-4-7503-0428-1
* 『兵庫の歴史 ― 古代から幕末まで』〔神戸市〕兵庫区まちづくり推進課、1993年9月

これらの著作から、落合重信の幅広い関心と、深い知識を窺い知ることができます。彼は、神戸の歴史を語る上で欠かすことのできない人物の一人です。

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