落第はしたけれど

映画「落第はしたけれど」について

「落第はしたけれど」は、1930年4月11日に公開された日本の映画で、松竹キネマが製作・配給しています。この作品は、著名な映画監督である小津安二郎が手掛けたコメディ作品であり、当時の日本社会の厳しい現実を背景に、特に大学生の生活を描いています。モノクロのサイレント映画であり、77分の上映時間が特徴です。

作品の背景とテーマ

映画が公開された時代、日本はバブル経済の崩壊や世界恐慌などの影響を受けており、若者たち、特に大学を卒業した者たちの間で職が見つからないことが深刻な問題となっていました。この社会状況を背景に、高橋らの学生生活が描かれています。彼らは試験に苦しむあまり、カンニングを計画しますが、失敗に終わり、さらには落第という結果を迎えます。

あらすじ

物語は、高橋たちが「試験地獄」と称される状況と闘う様子から始まります。試験初日、高橋たちはカンニングを試みますが、失敗に終わり、その夜には再度の挑戦として自分のシャツに答えをメモします。しかし、下宿のおばさんがそのシャツを誤って洗濯屋に持って行ってしまい、結局試験を乗り越えることができず、落第が決定します。この失敗を経て、卒業したクラスメートたちも就職できずに学校に戻りたくなる様子が描かれています。そして、彼らは新学期を迎える時に再び大学の門をくぐることになります。

スタッフとキャスト

「落第はしたけれど」の制作には多くの才能あるスタッフが参加しました。監督兼原案の小津安二郎をはじめ、脚本を担当したのは伏見晁です。撮影と編集は茂原英雄が行い、舞台設計には脇田世根一と小川二郎が起用されています。また、衣裳担当の鈴木文次郎がどのようにキャラクターに命を吹き込んでいるかも見逃せません。

キャストには、学生役の斎藤達雄、女学生役の二葉かほる、その息子の青木富夫など多彩なメンバーが揃っています。また、特に目を引くのは笠智衆の存在で、彼が及第生役で初めて目立つ役を演じています。その他にも、教授役や落第生役として多くの俳優が出演しています。

作品の影響

この映画は、ハロルド・ロイドの「ロイドの人気者」に影響を受けており、小津安二郎のアメリカ映画への関心が随所に見られます。映画制作にかかる時間は非常に短く、わずか1週間で撮影が完了したという点も注目です。初回の興行は帝国館で行われ、今でも多くの映画愛好家に愛されている作品となっています。

現在、この映画のフィルムは東京国立近代美術館フィルムセンターに所蔵されており、当時の日本映画のスタイルやユーモアを感じることができます。社会問題を背景にしながらも、彼らの学生生活や友情の喜びを描いており、観る者に笑いと共感を与える作品です。

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