落葉樹 (映画)

『落葉樹』は、新藤兼人監督が自身の幼少期の体験を基に制作した1986年公開の日本映画です。監督自身の原体験に基づいた物語であり、脚本も新藤監督自身が手掛けています。

物語は、冬の蓼科高原で、初老の作家が幼少期を回想する場面から始まります。裕福な家庭で育った主人公は、父、母、兄、二人の姉と幸せな日々を送っていました。家族で過ごした楽しい正月や、母と出かけた夏の海水浴など、子供時代の思い出が鮮やかに描かれます。

しかし、父が他人の借金の保証人になったことがきっかけで、一家の運命は暗転します。会社を畳むことになり、多額の借金を抱えた家族は、生活のために土地を手放すことを余儀なくされます。先祖代々の土地を手放すことに抵抗する父と、生活のために土地を売ることを勧める家族との間で、意見の対立が生まれます。その結果、兄は家を出て行ってしまいます。その後、土地を売却しますが、借金は増え続け、一家は徐々に崩壊していきます。

上の姉は家計を助けるためにアメリカへ移民することになり、家族に見送られながら旅立ちます。家が残っている間に兄を結婚させようと、母は屋敷で盛大な婚礼を執り行います。しかし、それもつかの間、一家はついに家を手放す日が来てしまいます。物語は、裕福だった家族が、借金によって徐々に崩壊していく過程を、家族の視点から丁寧に描いています。

主な登場人物

初老の作家：小林桂樹
母：乙羽信子
父：財津一郎
長姉：園みどり
次姉：若葉しをり
兄：川道信介
山へ来る女性：梶芽衣子
行商の女：初井言栄
作造：殿山泰司
作造の後妻：菅原悠乃
執達吏A：戸浦六宏
執達吏B：馬場当
伊左衛門：大滝秀治
兄の嫁：岡本真実
教師：深山富貴子
道具屋：森塚敏

スタッフ

監督・脚本：新藤兼人
撮影：三宅義行
音楽：林光
製作：丸井工文社
* 配給：近代映画協会

『落葉樹』は、家族の絆、時代の変化、そして人間の業を深く掘り下げた作品です。新藤監督自身の体験に基づいているため、リアリティに溢れ、観る者の心に深く訴えかけます。また、昭和初期の日本の風景や生活様式が丁寧に描かれており、当時の雰囲気を味わうことができます。家族の温かさ、そして時代の変化によって変えられていく家族の姿を、ぜひご覧ください。

もう一度検索