葛西御厨

葛西御厨（かさいのみくりや）

葛西御厨は、平安時代末期から中世にかけて下総国葛飾郡南部に存在した、伊勢神宮の御厨（みくりや）です。御厨とは、伊勢神宮に奉納する神饌（しんせん）を調達するための荘園の一種で、この地域では、伊勢神宮への重要な献上品を生産していました。

成立の経緯

永万元年（1165年）、この地に勢力を持っていた豪族、葛西清重（かさいきよしげ）が、自身の居城である葛西城（現在の東京都葛飾区青戸）を中心とした周辺の33郷を伊勢神宮に寄進したことで、葛西御厨は成立しました。寄進された地域は、上木毛河（かみけげがわ）、篠崎（しのざき）など、現在の東京都葛飾区や江戸川区を含む広大な範囲に及びました。この寄進によって、葛西氏は伊勢神宮の庇護を受けるとともに、地域における支配をより強固なものにしたと考えられています。

領家と支配

葛西御厨の領家（りょうけ）とは、荘園の支配権を持つ者のことで、当初は卜部氏（うらべし）がその職に就いていました。しかし、後に伊勢神宮外宮の禰宜（ねぎ）を務める度会氏（わたらいし）が世襲するようになり、この地域における度会氏の影響力が強まりました。領家は、御厨からの年貢や労役を徴収し、伊勢神宮に納める役割を担っていました。

江戸時代以降の変遷

江戸時代に入ると、葛西御厨は武蔵国に属するようになり、西葛西領（にしかさいりょう）と東葛西領（ひがしかさいりょう）に分かれました。これは、支配体制の変化に伴う行政区分であり、それぞれの地域で異なる歴史を歩むことになります。明治時代初期には、金町村（かなまちむら）、上木下川村（かみきしもかわむら）、下木下川村（しもきしもかわむら）、上篠崎村（かみしのざきむら）、下篠崎村（しもしのざきむら）といった村々が、この葛西御厨の領域にあたるとされています。

現在の葛西御厨

現在の行政区分では、葛西御厨の領域は、東京都の葛飾区と江戸川区の一部に相当します。かつての御厨の面影は薄れていますが、地名や歴史的資料を通して、その存在を知ることができます。この地域は、中世における荘園制度や伊勢神宮との関わりを考える上で、非常に重要な場所と言えるでしょう。

参考文献

清水正健「下総国 葛西御厨」『荘園志料』 下巻、昭和8年（1933年）。NDLJP:1917930/245。
『新編武蔵風土記稿』 巻ノ20葛飾郡ノ2、内務省地理局、1884年6月。NDLJP:763978/63。

外部リンク

* 百科事典マイペディア『葛西御厨』 - コトバンク

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