葛駅

葛駅：近鉄吉野線の静かな駅舎

近畿日本鉄道吉野線にある葛駅は、奈良県御所市戸毛に位置し、のどかな田園風景が広がる地域に佇む駅です。駅番号はF47。ひっそりとたたずむその姿は、長年に渡り地域の人々の暮らしを見守り続けてきました。

歴史を刻む、葛駅

葛駅の開業は、1923年（大正12年）12月5日にまで遡ります。吉野鉄道の吉野口～橿原神宮前（初代）間の開通と同時に開業。その後、幾多の合併を経て、現在の近畿日本鉄道吉野線の駅となりました。大阪電気軌道、関西急行鉄道、そして近畿日本鉄道と、日本の鉄道史を彩る企業の歴史と歩みも、この駅の歴史に刻まれています。1944年（昭和19年）の戦時統合による合併など、激動の時代を乗り越え、現在もなお地域に寄り添い続けています。2007年にはPiTaPaの利用開始、2011年には終日無人駅となりました。

駅名の由来：葛村の歴史

葛駅という駅名は、かつてこの地が南葛城郡葛村であったことに由来します。1958年（昭和33年）に南葛城郡のほぼ全域が御所市となったため、葛村は歴史の中にその名を残すこととなりました。興味深いのは、葛村の名前の由来。当初は「葛城村」となる予定でしたが、既に同郡内に「葛城村」が存在したため「葛村」に決定したそうです。また、吉野口駅も、南和鉄道時代（1896～1903年）に葛駅を名乗っていた時期がありました。ただし、現在の葛駅とは同時には存在していません。

簡素ながらも機能的な駅舎

葛駅は単式1面1線のホームを持つ地上駅です。ホームの有効長は4両分。吉野方面と大阪阿部野橋方面の列車は同じホームを使用します。駅舎はホームの橿原神宮前寄りにあり、改札口内には男女別の水洗式トイレが完備されています。無人駅であるため、自動改札機は設置されておらず、PiTaPaやICOCAは簡易改札機を利用します。橿原神宮前駅の管理下にあります。

利用状況：地域の変遷を映す

葛駅の利用状況は、近年減少傾向にあります。2005年には1日あたり800人を超える乗降客がいましたが、2022年には300人を下回るまで減少しました。この変化は、地域社会の構造変化や交通手段の多様化を反映していると言えるでしょう。

葛駅周辺：静かな環境

葛駅周辺は静かで落ち着いた雰囲気の場所です。国道309号線が近くを通っており、御所葛郵便局、高取丹生谷簡易郵便局、御所市立葛公民館、御所市立葛小中学校といった公共施設も近隣にあります。また、吉野葛粉で有名な井上天極堂の本社工場も近くにあります。

アクセス：バス路線

葛駅前にバス停はありませんが、徒歩数分の場所に「葛公民館前」停留所があります。御所市コミュニティバス（ひまわり号）東コースが運行され、JR掖上駅、近鉄御所駅、吉野口駅、かもきみの湯などを結んでいます。

その他：電報略号

葛駅の電報略号は「クツ」です。「クス」が名古屋線の楠駅で使用されているため、旧仮名遣いの「クヅ」を清音化して「クツ」としたとのことです。

隣の駅

葛駅に隣接する駅は、上り方面が市尾駅、下り方面が吉野口駅です。特急以外の全定期旅客列車が停車しますが、行楽シーズンのみ運転される快速急行は停車しません。

葛駅は、歴史と静寂が同居する駅です。その存在は、地域の生活に寄り添いながら、未来へと続いていきます。

もう一度検索