葛粉

葛粉（くずこ）とは

葛粉は、秋の七草の一つであるクズの根から採取されるデンプンを精製して作られる食品です。本来はクズの根から作られますが、一般的に「葛粉」として販売されているものには、ジャガイモやサツマイモ、コーンスターチなどのデンプンが混入されていることが多いです。

歴史と用途

葛粉は、古くから救荒食糧として利用されてきました。貝原益軒の「菜譜」や大蔵永常の「製葛録」にもその記録が残っています。冷めにくく、冷えると固まる性質から、和菓子や洋菓子の生地、料理のとろみ付けなど幅広い用途で使われています。

また、葛粉には体を温め、血行を良くする効果があるため、風邪の初期症状や胃腸の不調時に、民間薬としても利用されてきました。有効成分としてイソフラボンが含まれています。

製法

葛の根は、デンプンが豊富に蓄えられる冬が採取に適しています。採取した根は泥を落とし、繊維状に粉砕した後、真水で洗い、絞り汁をためてデンプンを沈殿させます。アク抜きと沈殿を繰り返すことで不純物を取り除き、良質なデンプンだけを乾燥させて製品とします。良質な葛粉を作るには、手間と根気が必要です。

産地と種類

石川県の宝達葛、宮城県の白石葛、奈良県の吉野葛、静岡県の掛川葛、三重県の伊勢葛、福井県の若狭葛、福岡県の秋月葛などが有名です。

本葛粉

葛粉100%のものは「本葛」と呼ばれ、滑らかな口当たりが特徴です。しかし、多少の苦味も伴います。本葛は生産量が少なく高価なため、一般に販売されている葛粉には、ジャガイモやサツマイモ、コーンスターチなどのデンプンが混入されていることが多いです。業界では、サツマイモのデンプン100%のものを「業務用並葛」と呼ぶこともあります。西日本、特に産地が多い近畿や九州では、本葛粉が比較的入手しやすいです。

生産状況

近年、本葛粉の生産は、クズの根を掘り出す人の高齢化や天然資源の減少により、国内生産量が減少し、中国からの輸入が増えています。中国産のクズは、日本産のクズとは植物学的に異なる種類です。中国産の葛根には、ポストハーベスト農薬や残留農薬のリスクが指摘されています。

利用法

葛粉は、葛湯、胡麻豆腐、和菓子、各種料理などに利用されます。独特のとろみと風味が、料理の味を引き立てます。

関連情報

• - クズ
• - 葛切り
• - 葛餅
• - 葛湯
• - 葛鰹
• - 葛根湯
• - 餡掛け
• - イソフラボン
• - マクロビオティック
• - 救荒植物
• - 片栗粉: 本来はカタクリの地下茎から作られたデンプンですが、現在ではジャガイモを原料とするものが多いです。

参考資料

• - 前田 清一：「葛粉について」澱粉工業学会誌 Vol.15 (1967-1968) No.1 P18-25
• - 兒島大學農學部學術報告 34, 17-28, 1984-03-15
• - 食品衛生学雑誌 38(4), J-241-J-244, 1997-08-05
• - 日本東洋医学雑誌 Vol.53 (2002) No.5 P503-507
• - 葛粉コトバンク

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