葵 (源氏物語)

『葵』の巻概要

『葵』は『源氏物語』の中で第9帖にあたります。この巻名は、光源氏と源典侍の歌から取られたもので、謡曲『葵上』の題材にもなっています。物語は、桐壺帝の譲位と源氏の兄・朱雀帝の即位から始まります。藤壺中宮の子が東宮に選ばれた後、源氏はその後見人となりますが、彼の運命は思わぬ方向へと進展します。

あらすじ

物語は、賀茂祭の日に源氏が供奉として参列する場面から展開されます。この祭りでは、源氏の正妻である葵の上も一緒に参加しており、二人の車は混雑した道で六条御息所の一行と争いになります。この争いから、御息所は恥をかかされ、彼女は葵の上を深く恨むようになります。これが後の悲劇を引き起こす重要な事件となります。

源氏は、この揉め事のけじめをつけるために御息所への謝罪に向かいますが、門前払いされてしまいます。源氏は彼女の怒りを恐れ、再び彼女の前に姿を見せるのをためらいます。

後日、源氏は紫の君を連れて再び賀茂祭に出かけますが、その時にも御息所の牛車に直面します。源氏は自分の運命を感じつつ、葵の上を支えなければならないことを痛感します。葵の上は次第に体調を崩し、源氏も彼女を看病することになりますが、そこには御息所の生霊の影がありました。

やがて、葵の上は男子を出産しますが、幸運は長く続きません。彼女は秋の司召の夜に急変し、残念ながら命を落としてしまいます。この知らせは、御息所にも届き、彼女は自身に降りかかる運命に愕然とします。こうして、『葵』の巻は悲劇的な終焉を迎えます。

葵の上の死後

葵の上の死が源氏に与えた影響は大きく、彼は彼女の四十九日を経て、子供の夕霧の育成を左大臣家に託します。悲しみの中にあった源氏は、紫の君と密かに再婚しますが、突然の出来事に紫の君は深くショックを受け、言葉を失ってしまいます。

源氏は、彼女の真の身分を世間に公表することを決意します。彼の行動は、これからの物語の展開にも影響を与えることとなるでしょう。この巻は、情愛の複雑さと悲劇的な運命の織り成す物語として、読者に強く印象を残します。

『葵』は感情の葛藤と運命の重さが交錯する巻として、後の物語においても重要な要素となっていることが特徴です。

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