蒟蒻問答

蒟蒻問答（こんにゃくもんどう）

概要

蒟蒻問答は、古典落語の演目であり、上方落語では餅屋問答として知られています。これは、身振りや手振りを交えた仕方噺の典型例として位置づけられています。幕末の著名な落語家、2代目林屋正蔵に起源を持つとされていますが、その成立過程には異説もあります。特に、同名の話が長野県の民話として存在することが指摘されており、民間伝承が改作されてこの落語が生まれた可能性が高いと言われています。

この噺に登場する旅僧の名前は、正蔵の戒名に由来しており、その名が物語の中で重要な役割を担っています。また、噺自体は多くの名人たちに演じられており、特に5代目古今亭志ん生のラジオ放送での演技は有名です。舞台設定として、現在の群馬県安中市が描かれ、当時は中山道の宿場町として賑わっていました。

あらすじ

物語は上州の安中に住む六兵衛という蒟蒻屋から始まります。かつては江戸のやくざ者だった六兵衛は、今では堅気となり、田舎で穏やかに暮らしています。彼は江戸から逃げてきた無一文の若者たちを温かく迎え入れ、世話をしてやっていました。そんな中、八公という若者は、いつまで経っても江戸に帰ろうとせず、仕事もやりたがらないため、六兵衛は彼に近所の無住の禅寺の坊主になることを提案します。渋々承諾した八公は、寺の坊主としての生活を始めるものの、特に何もすることがなく、気ままに過ごす日々が続きました。

ある日、旅僧の沙弥托善が訪れ、この寺の大和尚と禅問答をしたいと申し出ます。禅問答を経験したことがない八公は和尚の不在を理由に追い返そうとしますが、托善は一切引かず、和尚の帰りを待ち続けるのです。この状況を見た六兵衛は、自ら和尚のふりをして何とか追い返すことを決意します。

本堂では、袈裟をまとった六兵衛が待ち構えており、禅問答の知識がない彼は、旅僧からの問いかけに一切反応せず、沈黙を装います。その結果、旅僧はこの沈黙を禅家の荒行と思い込み、自ら身振り手振りで問いかけを始めます。旅僧が小さな輪を作ると、六兵衛は大きな輪を示して平伏させ、指の本数を示す問答でも次々と勝利を収めます。

最後の問いで旅僧が指を3本立てた際、六兵衛は目の下に指を置き、旅僧は混乱し、逃げ出してしまいます。八公はこの勝利に驚きつつも、旅僧に負けた理由を尋ねると、彼は無言の行の様子を説明します。これに対して、本堂に戻った八公は六兵衛が怒っているのを見つけます。六兵衛の話によると、旅僧は彼を偽物と見抜き、「お前の蒟蒻は小さい」とバカにし、さらには値切りを要求してきたため、彼は「まあ、無理だ」と返したというのです。

この作品は、食材を通じたユーモラスな対話の中に、人間の内面的な問いかけや逆境に立ち向かう姿勢を描いています。また、落語の面白さや巧妙な言葉遊びを通し、観客に深く考えさせる要素も含まれています。

その他の情報

蒟蒻問答の影響を受けたバージョンの一つに、餃子をテーマにした「餃子問答」があります。これは静岡県浜松市出身の瀧川鯉昇によって演じられました。また、1966年には、立川談志が八公役、柳家小さんが六兵衛役を担当し、リレー形式でこの噺を演じたこともあります。

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