蒲生のクス

蒲生のクス

蒲生のクスは、鹿児島県姶良市蒲生町上久徳の蒲生八幡神社境内に生育する、クスノキの巨木です。その圧倒的な存在感から、古くより神木として崇められてきました。国の特別天然記念物にも指定されており、日本を代表する巨樹として広く知られています。

概要

蒲生のクスの最大の特徴は、その大きさと樹齢です。高さは約30メートル、地上1.3メートルの高さでの幹周りは24.2メートル、根回りは33.5メートルにも達します。さらに、幹の中には約13平方メートル（畳8畳分）もの広さの空洞が存在しています。樹齢は約1500年と推定されており、その歴史の長さを物語っています。昭和63年（1988年）の環境庁による巨樹巨木調査では、日本最大の巨木として認定されました。地域では「蒲生の大楠」とも呼ばれ、親しまれています。

歴史

蒲生のクスには、興味深い伝説が残されています。平安時代初期、宇佐八幡宮神託事件で大隅へ配流された和気清麻呂がこの地を訪れた際、手にしていた杖を地面に突き刺したところ、それが根付いてこのクスノキになったという「杖立て伝説」です。また、蒲生舜清が蒲生八幡神社を創建した保安4年（1123年）には、すでに神木として祀られていたと伝えられています。このことから、当時から相当な大木であったと考えられます。永正3年（1506年）には、八幡の森で発生した火災により一部の枝を焼失する被害を受けました。

近代に入ると、大正2年（1913年）に発表された「大日本老樹番付」で東の横綱に選ばれ、その存在が広く知られるようになりました。大正11年（1922年）には天然記念物に、昭和27年（1952年）には特別天然記念物に指定されています。昭和60年（1985年）には、台風13号の強風により多くの枝葉を失う被害を受けましたが、地域住民の保護活動によって見事に復活を遂げました。

伝説

蒲生のクスは、出水市にある「出水の大楠」と深い関係があるという伝説も語り継がれています。この二つの巨樹は、互いに愛し合う仲であるとされ、その悲恋物語は人々の心を惹きつけています。この物語は、自然に対する畏敬の念と、人々のロマンチックな想像力を掻き立てます。

現在

現在も蒲生のクスは、蒲生八幡神社の境内でその雄大な姿を見せています。訪れる人々は、その圧倒的な存在感と歴史の重みに圧倒され、自然の力強さを感じることができます。また、地域のシンボルとして、地元の人々に愛され続けています。

参考文献

蒲生町郷土誌編さん委員会編　『蒲生町郷土誌』　蒲生町、1991年

外部リンク

蒲生のクス - 国指定文化財等データベース（文化庁）
蒲生の大楠 日本一の巨樹 - 鹿児島県観光連盟
蒲生のクス - 農林水産・食品産業技術振興協会

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