蒲郡市立図書館

蒲郡市立図書館は、愛知県蒲郡市宮成町に位置する公共図書館です。1969年7月1日に開館して以来、地域住民の学習と文化活動を支える重要な役割を担っています。

歴史

大正文庫（1914年 - 1961年）

蒲郡市は、かつて三河木綿や製塩で栄えた町で、大正時代から昭和初期にかけては、三河湾の竹島を中心とした観光業が発展しました。1914年（大正3年）4月には、大正天皇の即位を記念する事業の一環として、蒲郡南部尋常高等小学校に蒲郡図書館（大正文庫）が設立されました。この図書館は、町民に広く利用され、1928年度（昭和3年度）には2,117冊の蔵書を誇っていました。

蒲郡市中央公民館図書室（1961年 - 1969年）

戦後の1951年（昭和26年）11月3日には、蒲郡町中央公民館が開館しました。1954年（昭和29年）4月1日に蒲郡町、三谷町、塩津村が合併して蒲郡市が誕生すると、1961年（昭和36年）には蒲郡市中央公民館に図書室が設けられました。この図書室には、「大正文庫」の蔵書に加え、郷土史家である岸間芳松氏から寄贈された「岸間文庫」も設置されました。

蒲郡市立図書館（1969年 - 現在）

市民の間で独立した図書館設立の機運が高まり、1968年（昭和43年）12月に蒲郡市は宮内町の蒲郡警察署跡地で図書館の建設を開始しました。1969年（昭和44年）4月には蒲郡市立図書館開設準備室が設置され、同年7月に蒲郡市立図書館が開館しました。開館時の蔵書は約12,000冊でした。

1970年（昭和45年）5月には、蒲郡市中央公民館図書室にあった岸間文庫と大正文庫が蒲郡市立図書館に移管されました。開館当初は入館票を発行し、指定席で閲覧する形式でしたが、利用者の不評を受けて1971年（昭和46年）に自由に利用できる形に改められました。同年10月には、蒲郡市青少年読書感想文コンクールが開始され、1972年度（昭和47年度）には貸出数が152,713冊、蔵書数が32,271冊に達しました。また、1973年（昭和48年）7月には「子どもの本研究会」の活動として、毎週日曜日に児童室で絵本の読み聞かせ会が始まりました。1975年（昭和50年）10月には点字図書の貸出、1977年（昭和52年）4月にはカセットテープの貸出も開始されました。

1978年（昭和53年）9月から1979年（昭和54年）5月にかけて、初の増築工事が行われ、開架書架部分が拡張されました。これにより、収蔵能力は5万冊から12万冊に増加しました。1980年（昭和55年）4月には紙芝居の貸出が個人向けにも開始され、1982年（昭和57年）12月には2階のベランダを改修して軽読書コーナーが設置されました。1982年度（昭和57年度）末の蔵書数は132,207冊に達し、近隣市と比較して市民一人当たりの蔵書数が多かったのが特徴です。

1983年（昭和58年）9月から1984年（昭和59年）3月には、二度目の増築工事が行われ、移動式書架が設置され、身体障害者用のエレベーターも設置されました。これにより収蔵能力は22万冊に増加しました。その後、図書館だよりの発行や空調設備の全面改装、駐車場の整備などが行われ、1993年（平成5年）には図書館システムが導入され、金沢嘉市氏からの寄贈書を基に「金沢ヒューマン文庫」が設置されました。

指定管理者制度導入後（2009年 - 現在）

2009年（平成21年）4月には指定管理者制度が導入され、NPO法人ブックパートナーが運営を担うことになりました。これにより、開館時間が延長され、レファレンスカウンターやインターネット専用パソコンが設置されました。40周年記念イベントの開催や、愛知工科大学附属図書館との蔵書共同利用協定の締結など、活動の幅を広げています。

また、著名な作家や評論家を招いた文学講座、文部科学大臣賞の受賞、国立国会図書館からの感謝状贈呈など、地域文化の発展に貢献しています。さらに、地元出身の漫画家の展示会や、図書館司書と子供の心温まる交流がネット上で話題になるなど、地域に根ざした活動が注目を集めています。

施設

本館

蒲郡市立図書館の本館は、地上2階建て（一部3階建て）と地下1階建ての構造です。1階にはブラウジングルーム、展示室、児童室があり、2階には一般室、軽読書コーナー、郷土資料室、一般学習室、学生室があります。収蔵能力は25万冊で、253席の閲覧席と70台分の駐車場を備えています。

分室

蒲郡市立図書館には、複数の分室があります。分室では、本館と同様に一般書と児童書を所蔵しており、1か月に1度本の入れ替えが行われます。分室の設置は、1970年の「母と子の文庫」開設から始まり、その後、「青空文庫」や「貸出文庫」という形で市内各地に拡大していきました。

1981年には「貸出文庫」を図書館分室に改称し、1990年には7つの分室となりました。2013年に西部市民センター分室が廃止されたものの、蒲郡文化広場に新たに分室が設置され、現在に至っています。

特色

特別コレクション

蒲郡市立図書館には、以下の貴重な特別コレクションがあります。これらのコレクションは、かつて別館に収蔵されていましたが、別館の老朽化に伴い、現在利用が停止されています。

岸間文庫
大正文庫
松尾文庫
歌見文庫
岡本珪吾美術文庫
鈴木文庫
金沢ヒューマン文庫

特に「金沢ヒューマン文庫」は、教育者である金沢嘉市氏から寄贈された蔵書で構成されており、子どもの文化研究所所長も務めた金沢氏の教育に関する貴重な資料となっています。現在、蔵書は蒲郡市立蒲郡南部小学校に移転しており、利用再開に向けて準備が進められています。

がまごおり絵手紙大賞（終了）

1995年から2011年まで開催されていた「がまごおり絵手紙大賞」は、全国から応募作品が集まる人気のイベントでした。図書館が主催となり、市民の文化活動を盛り上げていました。応募作品数が1万点を超える年もあったものの、2011年を最後に終了しています。

利用案内

蒲郡市立図書館の利用時間や休館日などの詳細は、公式サイトをご確認ください。

参考文献

蒲郡市立図書館『図書館年報平成30年度版（平成29年度実績）』
『『蒲郡町誌復刻版』』名著出版、1973年。
蒲郡市史編さん事業実行委員会『蒲郡市史本文編4 現代編』蒲郡市、2006年。
蒲郡市誌編纂委員会・蒲郡市教育委員会『蒲郡市誌』蒲郡市、1974年。
蒲郡市三十年誌編纂委員会・蒲郡市教育委員会『蒲郡市三十年史』蒲郡市、1984年。

外部リンク

公式ウェブサイト
ブックパートナー(蒲郡市立図書館) (@book_partner) - X（旧Twitter）
* 金沢ヒューマン文庫を愛し守る会ブログ

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