絵手紙

絵手紙とは

絵手紙とは、絵と文章を組み合わせた手紙の一種です。市販の絵葉書とは異なり、絵も文章も自分で書くのが特徴です。素朴で温かみのある表現が魅力で、手紙としての役割だけでなく、趣味や自己表現の手段としても楽しまれています。

絵手紙の歴史

「絵のある手紙」自体は古くから存在していましたが、現在の「絵手紙」というジャンルが確立されたのは、書道家の小池邦夫氏が1978年から1979年にかけて美術雑誌『季刊銀花』で6万枚もの直筆絵手紙を発表したことがきっかけです。この発表が大きな反響を呼び、絵手紙は広く知られるようになりました。現在では、中高年層を中心に、趣味の一つとして定着しています。

絵手紙の特徴

絵手紙は、絵と文章を自分で描く点が、印刷された絵葉書とは異なります。また、モノクロ写真に色を塗る手彩色絵葉書とも違います。絵手紙は、書道や日本画の要素を取り入れつつ、より自由で素朴な表現が特徴です。そのため、絵心に自信がない人でも気軽に楽しむことができます。

絵手紙に使用する道具に明確な制限はありませんが、一般的には書道や日本画で用いる筆、墨、顔彩、画仙紙のはがきなどが使われます。身近な草花や野菜などをモチーフに、絵と短いメッセージを添えて、送る相手に気持ちを伝えます。

小池邦夫氏は、絵手紙のモットーを「ヘタでいい、ヘタがいい」としています。技術よりも、飾らない自分らしさを表現することを大切にしています。

絵手紙のかき方

絵手紙の基本的なかき方は、日本絵手紙協会のホームページで公開されています。以下にその手順をまとめます。

1. モチーフを決める：野菜や果物など、身近なものをモチーフにすると描きやすいでしょう。お手本を見ないで、自分の目で見たままを描くことが大切です。
2. モチーフを観察する：モチーフの形や色、質感をよく観察しましょう。
3. 絵を描く：下書きや練習はせずに、一発描きで描きます。筆の先をリラックスして持ち、懸腕直筆の形で描きます。モチーフをはがきからはみ出すくらい大きく描くと、迫力が出ます。まず墨で輪郭線を描き、その後、彩色します。色は何度も混ぜずに、軽く叩くようにして素早く塗ります。多少塗り残しがあった方が味が出ます。
4. 言葉を添える：短い言葉で、伝えたい気持ちを書きましょう。
5. 印を押す：消しゴムはんこなど、自作の印を使うのがおすすめです。
6. 宛先などを書き、投函する：一生懸命描いた絵手紙に失敗はありません。必ず投函しましょう。

絵手紙関連の団体・施設

日本絵手紙協会：1985年に設立された一般社団法人です。絵手紙の普及活動を行っています。2月3日を「絵手紙の日」と制定しています。

小池邦夫絵手紙美術館：山梨県忍野村にある美術館です。小池邦夫氏の作品や、収集した関連資料を展示しています。

山路智恵絵手紙美術館：長野県栄村にある美術館です。山路智恵氏の作品を展示しています。

絵手紙と地域活動

東京都狛江市は、小池邦夫氏が初めて絵手紙教室を開催した場所であり、「絵手紙発祥の地」とされています。市では、町おこしの一環として絵手紙を文化事業に取り入れており、駅前や郵便局などに絵手紙のモニュメントが設置されています。市内では、絵手紙の講習会や愛好会が活発に活動しており、市民が制作した絵手紙が街のあちこちに飾られています。

補記

歌人の清水比庵は、約110年前に庶民の暮らしや風俗を絵手紙にして同僚に送っていたことから、『絵手紙の元祖』とも呼ばれています。

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