蒿里山

蒿里山の概要

蒿里山（こうりざん）は、中国の山東省泰安市、名高い泰山の麓に位置する山である。かつては地獄を祀る祠が存在した場所であり、現在はその跡が残る廃墟と化している。興味深いことに、漢語で「蒿里」という言葉自体が黄泉、つまり死者の国を指すことから、この山の神聖さや不気味さを感じさせる。更に、古代の封禅の儀が行われた場所でもあり、この山は歴史的に多くの信仰や儀式に関連している。

地理的背景

蒿里山は泰山の登山口から南へ約5キロメートルの距離に位置している。明代に書かれた『泰山小史』には、その具体的な位置について「州の南二里ばかり」と説明されている。その山の形については、「亭禅」と「蒿里」という二つの別名を持ち、今はひとつの丘のような状況にあると記載されている。これにより、歴史的な信仰の場所であることが窺える。

信仰と歴史

蒿里山は古くから鬼神を祀る山として民衆に崇められ、同時に恐れの対象でもあった。この地は死者の魂が集まる場所とされ、『泰山小史』には「人が死ぬと、その魂は必ず蒿里山に還る」といった記述がある。また、死者に対する儀式が行われる場所として、現在でもその信仰は根強い。これに関連して、フランスの歴史家エドゥアール・シャヴァンヌは、これらの信仰が泰山の歴史の中で形成されたものであり、蒿里山は死の象徴として特化した場所であると述べている。

この山で行われていた信仰は道教的な思想の上に十王信仰を取り入れ、閻羅神を祀る森羅殿や十王殿が築かれてきた。シャヴァンヌの研究によれば、蒿里山が冥界の府になった理由には封禅の儀式が影響を与えた可能性があるとされている。

文化的な視点

蒿里山についての最も古い資料は「高里山総持経碑」とされ、五代の天福9年（944年）に建立されたものだ。この碑文には、当時の信仰や祭りに関する詳細が記されており、元朝の時代にも蒿里山の重要性が強調されている。同時期的資料では、地獄の祠としての機能が明記され、香の火が絶えることなく続いたことが証明されている。

明代に入ると、この場所は文学作品にも頻繁に登場するようになり、『醒世姻縁伝』や『水滸伝』などで言及されている。特に『水滸伝』では主人公たちが泰山の名所を巡る中で、蒿里山が取り上げられており、信仰が生活の一部であったことが示されている。

建築物と破壊の歴史

蒿里山には、地獄の法廷を象徴する森羅殿や閻羅殿、十王殿などの信仰を基にした建物が存在した。しかし、20世紀初頭、中華民国20年（1931年）には馬鴻逵の部隊によってほとんどが破壊され、信仰のシンボルが失われることとなった。破壊の直前、蒿里山は未だに線香の煙が立ち込める場所であり、多くの信者の参拝が行われていた。

今日の蒿里山

21世紀に入った現在でも蒿里山の信仰は続いているが、歴史的建物の多くが失われ、情報は限られている。近年では、その文化的な重要性が再評価され、観光名所としての側面も持つようになってきている。これにより、蒿里山は依然として人々にとって神秘的な存在であり続けている。

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