蓬莱柿

蓬莱柿（ほうらいし）

概要

蓬莱柿は、日本で古くから栽培されているイチジクの一品種です。この名前は「外国の柿のように甘い果実」に由来すると言われています。地域によっては「南蛮柿」や「唐柿」とも呼ばれています。また、「蓬莱」という言葉は、イチジクが不老不死の薬として知られていたことから仙人が住む土地の名前に由来するともされ、興味深い背景があります。

歴史

蓬莱柿が日本に渡ってきたのは、江戸時代初期とされています。この時、ポルトガル人によってペルシャ原産のイチジクが長崎に伝えられました。そして、このイチジクが蓬莱柿とされています。江戸時代中期には、その名が著作『和漢三才図会』に取り上げられており、「俗に唐柿という。一月にして熟すゆえに一熟と名づく」と紹介されています。

明治時代に入ると、新潟県の五十公野地区でも栽培が始まり、今でもその伝統が受け継がれています。しかし、明治後期にアメリカから輸入された桝井ドーフィンと比較すると、蓬莱柿は実が小さく、柔らかいため、徐々に市場シェアを失っていきました。桝井ドーフィンは収量が多く、しっかりとした果皮を持つため、現在では日本のイチジク市場の多くを占めています。それでも、蓬莱柿の生産は依然として続いており、全体の約2割を占めているのです。

特徴

蓬莱柿の果実は、一般的に60〜100g程度の比較的小さなサイズを持ちます。果皮は黄緑がかった褐色から赤紫色をしており、食感はプチプチとしています。完熟した果実は特に甘く、桝井ドーフィンとは違った独自の風味があります。ただし、秋に果実が成熟するため、その熟成はやや遅めです。また、雨が降ると果実が裂けやすい特性もあります。

この柿の皮は非常に薄く柔らかく、丸ごと食べることができる点が魅力の一つです。しかし、これが原因で輸送時に傷むことが多く、現在は主に西日本地域で栽培されています。生産量全体が少なく、霜や凍結には耐えられませんが、近年の物流技術の向上により、全国で購入可能になりつつあります。

生産状況

主な生産地は広島県尾道市であり、ここでは蓬莱柿の生産が盛んです。また、愛媛県や福岡県などの西日本地域でも多く栽培されています。特に島根県の出雲市多伎町では「いちじくフェア」が開催され、小ぶりながら甘みが強い「多伎いちじく」の生産で知られています。

接ぎ木技術も進化しており、農文協の調査によれば、緑枝接ぎ木の成功率は67％に達しています。特に『接ぎ挿し』と呼ばれる方法は、高い成功率を誇り、イチジクの生産にとって重要な技術となっています。

このように、蓬莱柿は日本の伝統的な果物であり、その独特な風味と甘さは他の品種にはない特長があります。今後も、その魅力が多くの人々に伝わっていくことを期待しています。

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