蔚山飛行場 (初代)

蔚山飛行場は、日本統治下の朝鮮、現在の韓国蔚山広域市南区に位置していた飛行場です。1920年代後半、日本は本土と朝鮮半島、中国大陸を結ぶ航空路線の開設を計画し、その一環として蔚山に飛行場を建設しました。

歴史

1928年（昭和3年）より用地買収が開始され、太和江の南岸に滑走路が建設されました。当初は南北600mでしたが、後に東西方向にも600mに拡張されました。本来、この地域の航空需要を考えると釜山に飛行場を設けるのが最適でしたが、釜山が要塞地帯に指定されていたため、代わりに海岸に近く釜山にも近い蔚山が選ばれた経緯があります。

1929年（昭和4年）4月1日には、日本航空輸送が運航する大連からの第一便が到着し、その後、東京と大連を結ぶ路線の中継地として機能しました。1930年（昭和5年）には蔚山航空無線局も設置され、1935年（昭和10年）には蔚山橋の改築により飛行場へのアクセスが改善されました。

しかし、航空機の大型化に対応できなくなったため、1937年（昭和12年）に大邱飛行場が開設されると、慶尚道の主要な飛行場としての役割を終えることになりました。地元住民は機能移転に反対しましたが、受け入れられず、1938年（昭和13年）9月30日をもって定期便の寄港は中止され、不時着場として扱われるようになりました。その後、日本陸軍が練習機用飛行場として使用しました。

朝鮮戦争時にはアメリカ軍が非常用滑走路として利用し、戦後も韓国国防部が有事に備えて用地の一部を確保していました。しかし、蔚山の都市化が進むにつれて1980年代までに全ての用地が払い下げられ、現在は南区庁舎や住宅地となっています。なお、現在の蔚山空港は北区にあり、この飛行場とは別の場所に位置しています。

事件・事故

蔚山飛行場ではいくつかの事故が発生しています。

1935年（昭和10年）10月19日には、大連から到着予定の旅客機が機関故障により蔚山沖に不時着しました。乗員2名、乗客1名は救助隊によって無事救助されました。

1936年（昭和11年）10月10日には、日本陸軍のダグラス機がエンジン故障により蔚山飛行場外の水田に不時着し、機体は大破しました。この機には11名が搭乗していました。

参考文献

鮮交会 編著『朝鮮交通史』1986年

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