蔡州の戦い

蔡州の戦い：金朝の滅亡とモンゴル・南宋の協力関係

1233年から1234年にかけて、金朝最後の皇帝・哀宗が逃れた蔡州で、モンゴル帝国と南宋の連合軍による大規模な包囲戦が勃発しました。この蔡州の戦いは、金朝の滅亡を決定づけた重要な戦いとされています。

戦いの背景：衰退する金朝とモンゴルの侵攻

1229年、オゴデイがモンゴル帝国の新たな皇帝に即位すると、その最初の大きな目標として金朝の征服を掲げました。モンゴル軍は三方面からの侵攻を開始し、そのうちトゥルイ率いる右翼軍は南宋領を経由するという大胆な作戦で河南に侵入。三峰山の戦いで金軍の主力部隊を壊滅させます。

この敗北によって金朝は野戦での抵抗力を失い、首都・開封はモンゴル軍に包囲されました。もはや開封を防衛することは不可能と判断した哀宗は、少数の側近を連れて開封を脱出。帰徳を経て蔡州に逃れましたが、そこで再びモンゴル軍の包囲網に閉じ込められることになります。

哀宗の逃避行と開封の混乱

哀宗の開封脱出は極秘裏に行われ、皇后すら伴わず、僅かな側近のみを連れて城外に出ました。脱出後、哀宗は北上を試みますが、将軍の失策やモンゴル軍の圧倒的な強さによって敗退。帰徳に退却せざるを得ませんでした。

その間、開封では哀宗が留守中に崔立によるクーデターが発生。開封の情勢を掌握できなくなった哀宗は、最終的に蔡州に逃れることを余儀なくされました。この時点で、哀宗の行動はモンゴル軍に完全に捕捉されており、蔡州包囲戦は避けられない状況となっていました。

モンゴルと南宋の連携：共同の敵金朝

モンゴル帝国は、金朝討伐のため南宋との同盟を結びました。南宋朝廷は、金朝に対する長年の恨みもあり、この申し出を受け入れ、モンゴル軍に協力を約束します。こうして、モンゴルと南宋の連合軍による蔡州包囲戦が始まりました。

南宋軍は、江陵副都統・孟珙率いる大軍を派遣し、金朝領への侵攻を開始。鄧州、申州、唐州など複数の都市が陥落し、金朝の防衛線は崩壊しつつありました。金朝は南宋に同盟を申し入れましたが、南宋はこれを拒否しました。

蔡州包囲戦：決死の抵抗と食糧不足

モンゴル軍は蔡州を包囲すると、城壁に迫る長塁を築き始めます。蔡州城内では食糧不足が深刻化し、餓えた民衆は救いを求めます。金軍は必死の抵抗を続けますが、包囲網は次第に狭まり、城内の状況は悪化の一途を辿ります。

南宋軍も加わり、モンゴル・南宋連合軍による総攻撃が始まりました。金軍は、南門、北門などで激戦を繰り広げますが、劣勢を覆すことはできませんでした。各地で金朝の都市がモンゴルに降伏し、蔡州は完全に孤立しました。

蔡州陥落：哀宗の最期と金朝の滅亡

1234年1月9日、絶体絶命の状況に陥った哀宗は、族兄の呼敦に譲位。しかし、翌日の総攻撃で南門が陥落すると、哀宗は自害しました。その後、呼敦も戦死し、在位わずか一日で金の末帝となりました。蔡州の陥落によって、金朝は名実共に滅亡しました。

さまざまな記録：歴史の断片

蔡州の戦いについては、中国の史書だけでなく、ペルシア語の史書『集史』にも記録が残っています。『集史』には、哀宗の遺体に関する興味深い記述があり、中国の史書とは異なる伝承が伝わっています。

蔡州の戦いは、金朝滅亡という歴史的転換点、そしてモンゴルと南宋の協力関係という重要な局面を示す出来事であり、東アジアの歴史を理解する上で非常に重要な意味を持ちます。様々な史料を参考に、その詳細を紐解くことで、より深い理解が得られるでしょう。

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