薄皇后 (漢景帝)

薄皇后（はくこうごう）は、前漢の景帝の最初の皇后であり、その生涯は平坦ではありませんでした。彼女は会稽郡呉県（現在の江蘇省蘇州市一帯）の出身で、薄姫（景帝の祖母）と同族にあたります。

劉啓（後の景帝）がまだ皇太子であった頃、薄皇后は皇太后であった薄姫の意向により、皇太子妃として迎えられました。これは、皇室の血筋を重んじ、安定した後継体制を築くための政治的な判断であったと考えられます。

前漢の景帝が即位すると、薄皇后は正式に皇后の位に立てられました。しかし、皇后としての彼女は、景帝から寵愛を受けることはありませんでした。景帝には多くの妃嬪がおり、それぞれが様々な思惑の中で皇位継承を争っていました。薄皇后は、そのような状況の中で孤立し、子を授かることもありませんでした。

彼女の運命が大きく変わったのは、前155年に太皇太后であった薄姫が崩御したことでした。薄姫は、薄皇后にとって最も有力な後援者であり、その存在が彼女の皇后としての地位を支えていました。薄姫の死後、薄皇后は後ろ盾を失い、宮廷内での影響力を急速に低下させました。

そして、前151年、ついに薄皇后は皇后の位を廃されることになりました。これは、中国の歴史上において最初の廃后の事例であり、彼女の不遇な運命を象徴する出来事と言えるでしょう。過去にも、前漢の劉邦（高祖）が呂后と太子を廃そうとしたことがありましたが、張良らの諫言により実現には至りませんでした。薄皇后の廃位は、前漢の皇室における権力闘争の激しさと、女性の地位の不安定さを示すものとして捉えることができます。

廃位後、薄皇后は前148年に亡くなりました。彼女は長安の東に葬られ、その生涯を終えました。彼女の墓は、権力闘争の犠牲となった女性の悲哀を今に伝える静かな場所となっています。

彼女の生涯は、『史記』巻49に記録されており、後世に伝えられています。彼女の物語は、栄光と挫折、そして権力闘争の残酷さを描き出し、歴史の教訓として語り継がれています。

もう一度検索