薄姫

薄姫（はくき）

薄姫（? - 紀元前155年）は、中国の秦末から前漢前期にかけての人物で、高祖劉邦の側室であり、文帝の生母として知られています。彼女は薄氏と呼ばれ、薄太后としても広く知られています。

生涯

薄姫は、かつて魏の王族であった魏氏を母に持ち、呉県出身の薄某を父に持ちました。彼女は若い頃、西魏王魏豹の後宮に入り、側室となりました。この時、許負という占い師が彼女を見て「あなたは必ず天子を産むでしょう」と予言したと伝えられています。

しかし、魏豹が劉邦に敗れると、薄姫は劉邦の後宮に迎えられることになります。彼女は他の側室たちと「誰が寵愛を受けても互いを忘れずにいよう」と約束しましたが、自身はなかなか劉邦の寵愛を受けることができず、機織りなどの雑用に従事する日々を送りました。劉邦はそんな彼女を不憫に思い、寝所に召し入れたところ、薄姫は妊娠し、後の文帝となる劉恒を産みました。しかし、その後も薄姫が劉邦の寵愛を深く受けることはありませんでした。

劉恒が代王に封じられると、薄姫は代王太后として、弟の薄昭や傅寛らと共に代国へ赴きました。このことが、高祖の死後に権力を握った呂后による迫害から逃れることにつながりました。

紀元前180年、呂氏一族がクーデターによって滅ぼされると、代王劉恒が皇帝として迎えられ、薄姫は皇太后として長安に迎えられました。

文帝の治世中、周勃に謀反の疑いがかけられた際、薄太后は文帝を叱りつけ、周勃を救いました。また、文帝が匈奴を討伐しようとした際も、薄太后の諫言によって撤回させています。文帝は薄太后のために自ら毒味役を務めたとも伝えられており、その親孝行ぶりは『二十四孝』にも記されています。

皇太后となった後も、薄姫は権力を濫用することなく、周囲から尊敬を集めました。弟の薄昭が事件を起こして自殺したことや、文帝に先立たれたことなど悲しい出来事もありましたが、平穏な日々を過ごし、紀元前155年に生涯を閉じました。

後漢の時代になると、光武帝によって呂后から皇后の位と諡号が剥奪され、代わりに薄姫に高皇后の諡号が追贈されました。

薄姫は、激動の時代を生き抜き、皇太后としてその名を知られることになった女性です。彼女の生涯は、運命に翻弄されながらも、強く生き抜いた女性の姿を私たちに伝えてくれます。

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