薛仁貴

薛仁貴（せつ じんき）

薛仁貴（614年 - 683年）は、中国・唐代の武将。字は仁貴。絳州竜門（現在の山西省）出身。北魏の武将・薛安都の末裔にあたります。

生い立ちと初期の活躍

若い頃は貧しく、農業を営んでいましたが、妻の柳氏の勧めで唐の徴兵に応じ、高句麗遠征に参加したことが、彼の運命を大きく変えました。

戦場では、その卓越した武勇と勇気で頭角を現し、郎将の劉君昂を救出したことでその名を知られるようになりました。特に、安市城の戦いでは、目立つ白衣を身に着け、先頭に立って敵陣に突撃し、高句麗軍を打ち破るという大胆な戦いぶりで、太宗の目に留まりました。これにより、遊撃将軍に任命され、褒賞を受けました。

唐への忠誠と功績

654年、高宗が行幸中に洪水に見舞われた際、薛仁貴は危険を顧みず、宮中へ警告を発し、皇帝の危機を救いました。この功績により、高宗は彼を忠臣として称えました。

その後も、西突厥との戦いでは、捕虜となった敵の家族を解放することで、敵の戦意を喪失させ、勝利に貢献しました。高句麗との戦いでは、数々の城を陥落させ、単騎で敵陣に突入するなど、その勇猛ぶりは敵を恐れさせました。

662年、九姓突厥との戦いでは、その弓術の腕前を発揮しました。彼は三本の矢で敵の精鋭兵を射抜き、敵の士気を大きく下げて降伏させました。この戦いの後、「将軍は三箭で天山を定め、壮士は長歌して漢関に入る」と歌われるほど、彼の武勇は広く知れ渡りました。

高句麗平定後の活躍と失脚

高句麗平定後、薛仁貴は平壌に駐屯し、安東都護として高句麗の人々を統治しました。彼は現地の治安を安定させ、人々の信頼を得ました。しかし、670年の吐蕃遠征では、指揮下の将軍の不手際により大敗を喫し、その責任を問われて官職を剥奪されてしまいました。

その後、高句麗の残党が蜂起したため、再び軍務に復帰しましたが、事件に連座して流罪となりました。その後、赦免され、再び軍事の要職を歴任しました。

晩年と死後

晩年は、突厥との戦いで功績を挙げましたが、683年に70歳で亡くなりました。死後、左驍衛大将軍、幽州都督の位を追贈されました。

薛仁貴の物語と影響

薛仁貴の武勇と忠誠心は、後世の人々に語り継がれ、物語や戯曲の題材となりました。特に、元代の雑劇「薛仁貴衣錦還郷」や清代の通俗小説「薛仁貴征東」は有名です。これらの物語を通して、薛仁貴は伝説的な英雄として広く知られるようになりました。

また、彼の息子である薛訥も、父に劣らず勇猛な武将として活躍し、その物語は『説唐』という小説の薛丁山のモデルになったと言われています。

まとめ

薛仁貴は、唐代を代表する名将の一人です。その卓越した武勇、知略、そして唐への忠誠心は、後世に大きな影響を与えました。彼は、貧しい農民から身を起こし、数々の戦で勝利を収め、唐の領土拡大に大きく貢献しました。彼の生涯は、多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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