薩摩湖

薩摩湖：歴史と自然が織りなす静かな水面

鹿児島県日置市吹上町中原に位置する薩摩湖は、かつて中原池と呼ばれた歴史を持つ湖沼です。東シナ海に面した吹上浜から約1.5キロ[[メートル]]内陸にあり、砂丘によって海と隔てられた、いわゆる砂丘湖、もしくは海跡湖に分類されます。

湖水は独特の黄緑色をしており、pH7.8の弱アルカリ性を示します。湖岸にはハスやガガブタなどの水生植物が群生し、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類に指定されているミズスギナも生育しているなど、生物多様性に富んだ環境を形成しています。魚類ではコイやギンブナ、ゲンゴロウブナといった在来種に加え、ブラックバスやブルーギルといった外来種も生息しています。

湖の南東側には枦ヶ峰城跡の丘がそびえ立ち、ツツジ、バラ、ツバキなど様々な花々が咲き誇り、地域住民の憩いの場となっています。湖の西側には吹上浜運動公園が広がり、北側には正円池と亀原池という二つの湖が隣接するなど、周辺環境も豊かな自然に恵まれています。

薩摩湖の歴史は古く、江戸時代には真珠の養殖が行われていたという記録も残っています。1954年（昭和29年）に中原池から薩摩湖へと改名され、その後、鹿児島交通の前身である南薩鉄道によって周辺地域はさつま湖公園として整備されました。

昭和30年代には、湖上をまたぐロープウェイや遊覧船が運行され、西側湖畔には薩摩湖駅も設置されるなど、多くの観光客で賑わいました。1962年（昭和37年）からはさつま湖花火大会も開催され、地域のイベントとして盛況を極めました。しかし、昭和40年代以降は次第に衰退していき、さつま湖公園は2001年（平成13年）に吹上町の管理に移管され、2007年（平成19年）には閉鎖されました。

現在、薩摩湖はかつての賑わいこそ失われましたが、静かで美しい自然景観を保っています。絶滅危惧種を含む様々な動植物が生息し、歴史的建造物も残る薩摩湖は、自然と歴史を同時に楽しめる貴重な場所と言えるでしょう。かつての観光地としての面影を残しつつ、新たな魅力を発見できる場所として、今後も人々を惹きつけていくことでしょう。

参考文献

田中正明　『日本湖沼誌2』 名古屋大学出版会、2004年、ISBN 4-8158-0492-3
吹上郷土誌編纂委員会編　『吹上郷土誌　通史編3』　吹上町、2003年

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