薬丸兼成 (新蔵)

薬丸兼成（やくまる かねしげ）は、江戸時代中期に薩摩藩に仕えた武士であり、剣客として名を馳せました。通称は新蔵（しんぞう）、諱は兼成（かねしげ）といい、一般には薬丸新蔵として広く知られています。彼は、薬丸兼武（やくまる かねたけ）の次男として生まれ、兄である兼義（かねよし）（通称：半左衛門）とともに、薬丸自顕流（やくまるじげんりゅう）の達人として剣聖と称されるほどの剣術の腕前を持っていました。

生涯

文政10年（1827年）7月、薬丸兼成は初めて藩主にお目見えしました。天保3年（1832年）には、父である兼武が屋久島へ遠島となるという出来事がありました。天保14年（1843年）には、兄の兼義が大島蔵方目付として奄美大島へ赴任することになり、2年間の任期の間、兼成は兄の代理として薬丸流の指導にあたりました。弘化元年（1844年）に兄が任期を終えて鹿児島へ帰還した後も、兼成は薬丸流の指導に尽力しました。しかし、嘉永3年（1850年）に兄に先立ちこの世を去りました。

人物

薬丸兼成は、父である薬丸兼武の厳しい指導の下、兄の兼義とともに薬丸流の修行に励みました。父が流罪となったことで家計は困窮し、兄弟はかぼちゃばかりを食べて生活していたため、「かぼちゃ薬丸どん」と呼ばれることもありました。この逸話は、彼らの質素な生活ぶりと、苦難の中でも剣術の鍛錬を怠らなかった精神力を物語っています。

天保年間に行われた軍制改革によって、薬丸流は再び脚光を浴びることとなりました。また、寺田屋騒動で活躍した鈴木勇右衛門の起請文の宛名が、兄の半左衛門と新蔵の連名となっていることから、当時、兄弟が共同で薬丸流を指導していたことが伺えます。

兼成は多くの弟子を指導しましたが、兄よりも先に亡くなったため、その後の薬丸流の発展を直接見届けることはできませんでした。しかし、彼の残した剣術の指導は、後世に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考文献

「鹿児島市史III」
松下志郎「奄美資料集成」南方新社

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