藤の森古墳

藤の森古墳（ふじのもりこふん）

藤の森古墳は、大阪府藤井寺市野中に存在した古墳であり、その形状は円墳として知られています。この古墳は、古市古墳群の一部を構成する重要な遺跡として位置づけられており、特に畿内における横穴式石室としては最古の例の一つとされています。しかし、残念ながら現在ではその墳丘は失われてしまいました。

古墳の概要

この古墳は、大阪府東部、誉田御廟山古墳（応神天皇陵）の西に位置し、大乗川によって隔てられた台地上に築かれました。周辺には蕃上山古墳があり、古墳自身は調査が行われた際には盗掘の影響を受けていたため、過去に3回の発掘調査が行われました。これらの調査によって、墳の形状は円形で直径が25.5メートル（もしくは22メートルまたは24メートル）であることが確認されています。

墳丘の外側には、こぶし大の河原石による葺石が施され、さらに円筒埴輪や多様な形状の埴輪（家形、盾形、蓋形、草摺形など）が見つかりました。また、墳丘の周囲には幅2.5から4メートル、深さ0.5メートルの周濠が設けられ、古墳の防御機能を果たしていたと考えられています。

埋葬施設は片袖式の横穴式石室で、南向きに開口しています。石室内では木棺が据えられていたと推測されており、副葬品として玉類、鉄製の矢じり、鉄の槍、革の短甲が出土しています。古墳の築造時期は、古墳時代中期の5世紀後半または中葉とされています。この古墳は小規模ではありますが、横穴式石室の初期段階を示す重要な遺跡として注目されています。

遺跡の歴史

藤の森古墳は、1965年（昭和40年）に大阪府水道部による美陵ポンプ場の建設に伴い発掘調査が行われ、その後も1993年（平成5年）、1996年（平成8年）に追加の発掘調査が実施されました。これらの調査により、古墳の構造や出土品が明らかになりました。

埋葬施設について

埋葬施設は、片袖式横穴式石室で、全長約4.5メートル、玄室は長さ3.5メートル、幅1.5メートル、羨道は長さ約1メートル、幅は0.8から0.9メートルになります。石材には板状の割石が使われ、側壁には赤色顔料が塗布されている部分も見受けられます。さらに、発掘調査によると、石室内からは鉄製の釘や鎹が見つかり、木棺があったと考えられています。また、副葬品の一部は石室内から出土し、特にガラス製の勾玉や丸玉、鉄の矢じりが重要な発見とされています。

主な出土品

発掘調査によって得られた副葬品は多岐にわたり、以下のものが特に注目されています：

• - ガラス製勾玉
• - ガラス製丸玉
• - 金銅製三輪玉
• - 鉄鏃
• - 鉄鉾
• - 革製の短甲
• - 墳丘上から出土した馬具

関連施設

藤井寺市立生涯学習センター（アイセルシュラホール）では、藤の森古墳から移築された石室と、出土した遺物が展示されています。この施設は、古墳の文化的な価値を広く知らせるための重要な役割を果たしています。

参考文献

• - 藤井寺市、史跡説明板（2019年設置）
• - 藤井寺市史、第3巻（1986年）
• - 大阪府水道部美陵ポンプ場内の発掘調査概要に関する文献など

このように、藤の森古墳は古代の重要な文化遺産であり、過去の人々の埋葬習慣や歴史を現代に伝える貴重な資料と言えるでしょう。

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