円筒埴輪

円筒埴輪：古墳時代の謎を解く鍵

円筒埴輪は、古墳時代に古墳の周囲などに立てられた粘土製の円筒状の物体です。その素朴な形状とは裏腹に、古墳時代の歴史や文化を解き明かす上で、極めて重要な役割を果たしています。本稿では、円筒埴輪の起源から種類、特徴、そして研究史までを多角的に解説します。

古代からの歴史：起源と進化

円筒埴輪の起源は、弥生時代後期（2世紀頃）の岡山県を中心とした吉備地方に見られる特殊器台・特殊壺に遡ると考えられています。これらの器物は葬送儀礼に用いられ、次第に円筒状の形態へと変化していったと推測されています。3世紀半ばには、箸墓古墳などでも同様の器物が使用されており、円筒埴輪の原型が形成されていった過程を示唆しています。

その後、円筒埴輪は前方後円墳の普及と共に全国へと広がり、古墳の年代を特定するための重要な指標となりました。その大量生産と全国的な普及は、当時の社会構造や技術力の高さを物語っています。

研究史：論争と進展

円筒埴輪の研究は、明治時代の近代考古学研究開始とほぼ同時に始まりました。坪井正五郎は、円筒埴輪の表面に見られる刷毛目模様に着目し、墳丘の崩落を防ぐ土留めの跡を模倣したものであるという説を唱え、他の研究者たちと活発な議論を交わしました。

その後、近藤義郎と春成秀爾による研究により、円筒埴輪が弥生時代の特殊器台・特殊壺を起源とするという説が提唱され、その変遷過程が明らかになりつつありました。

1978年には、川西宏幸による画期的な研究成果「円筒埴輪総論」が発表されました。川西は、円筒埴輪の突帯の形状や刷毛目の向きなどの属性を詳細に分類・検討し、それらを年代特定の基準として用いる独自の編年体系を構築しました。この編年体系は、須恵器生産技術や窖窯の導入時期なども考慮されており、現代においても考古学研究において広く支持されています。

種類と特徴：多様な形態と大きさ

円筒埴輪は、基本的には下部が単純な土管状の形状をしています。壺を載せる器台としての機能から、垣根のように並べるものへと変化したと考えられています。主な種類としては、普通円筒埴輪と朝顔形埴輪があり、さらに鰭付円筒埴輪なども存在します。

これら円筒埴輪の表面には、刷毛目と呼ばれる無数の筋目模様が見られます。これは、製作時に木製の板状工具を用いて表面を撫でた際の痕跡だと考えられています。円筒埴輪は、通常、数本の円筒埴輪に対して1本の朝顔形埴輪の割合で配置されていました。その大きさは数十センチメートルから1メートル程度のものが最も多く、中には2メートルを超えるものも存在します。

結論：古墳時代の理解への貢献

円筒埴輪は、その簡素な形状とは裏腹に、古墳時代の社会構造、葬送儀礼、技術水準などを理解する上で極めて重要な役割を果たしています。その起源、種類、特徴、そして研究史を辿ることで、古代日本の歴史と文化への理解を深めることができるでしょう。今後の研究によって、さらに多くの知見が得られることが期待されます。

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