藤原保輔

藤原保輔についての詳細

藤原保輔（ふじわら の やすすけ）は、平安時代中期に存在した日本の貴族および盗賊として知られています。彼は藤原南家的な系譜を持ち、父は右京大夫の藤原致忠でした。保輔もまた公の役職を歴任し、正五位下という官位にありましたが、彼の名を広めたのはその政治的な地位ではなく、その犯罪行為、とりわけ盗賊としての活動でした。

経歴と犯罪

保輔は、官人としての職務を果たす一方で、右兵衛尉や右馬助、右京亮などの役職を歴任しました。しかし、公人でありながら、彼は自らの悪行を重ね、盗賊としての名声を得ることになりました。『尊卑分脈』によると、彼は15回も追討の宣旨を受けることになったとされています。この記録からもわかるように、保輔は非常に危険かつ影響力のある存在でした。

寛和元年（985年）、大饗の席で藤原季孝に対する尋常ならざる傷害事件を起こしたことが、彼の名をさらに広める要因となりました。その後も、彼は兄の藤原斉光を追捕した源忠良を射殺したり、藤原景斉や茜是茂の邸宅を襲撃するなど、数々の犯罪を重ねていきました。これらの行為に対して朝廷は捜索命令を出し、保輔を捕まえた者には報酬を与えると発表しました。

しかし、自らの父が連行されるなど、厳しい状況を強いられた保輔は、危険を感じて同年6月14日に北花園寺で剃髪して出家を決意します。しかし、すぐにかつての手下であった足羽忠信の密告により捕えられました。逮捕された際、保輔は悲劇的な選択をし、自らの腹を切って自害を試みました。その結果、翌日には獄中で亡くなる運命を辿ります。この出来事は、日本最古の切腹の記録として知られ、以後武士の自殺手段として切腹が用いられるようになりました。

後世の影響

後の時代において、保輔の存在は『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』に登場し、彼は「袴垂」というあざ名でも知られるようになりました。このあざ名は彼を象徴するものとなり、特に盗賊としての活動が強調されています。また『続古事談』には、初めて「袴垂保輔」という表記が登場し、彼の人柄や背景が語られるようになりました。

説話

『宇治拾遺物語』によれば、保輔は自らの屋敷の蔵に穴を掘り、商人を呼び寄せて商品を扱ったかのように見せかけ、その場で商人を穴に突き落として命を奪っていたとされています。このような冷酷な行為が彼の評判をさらに悪化させ、盗賊として恐れられることになったのです。

関連作品

藤原保輔の伝説的な人物像は、多くの文学作品や映画に影響を与えました。特に、吉川英治による短編小説『平安群盗伝 袴だれ保輔』は、1951年には映画化され、保輔の名は広く知れ渡ることとなりました。この映画では、彼の武勇や犯罪者としての側面が描かれ、観客に深い印象を与えました。

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