藤原鶴来

藤原鶴来（ふじわら かくらい）

藤原鶴来（1893年4月15日 - 1990年1月15日）は、岡山県玉野市出身の書家であり、書道研究者です。本名を茂（しげる）といい、鶴来は号として用いました。特に「和漢書道史」や「書源（新書道字典）」といった書道史研究における重要な著作で知られています。また、中国・青龍寺にある「空海記念碑」の揮毫者としてもその名を知られています。

経歴と業績

岡山師範学校（現在の岡山大学教育学部）で書を学び始め、大原桂南に師事しました。その後、丹羽海鶴、鈴木翠軒、加藤飯山といった大家にも師事し、さらに比田井天来、松田南溟からも薫陶を受けました。幅広い知識と確かな技術に裏打ちされた書は、多くの人々を魅了しました。

教育者としても優れた才能を発揮し、岡山第一中学校の教員を経て、香川師範学校（後の香川大学教育学部）で教鞭を執りました。香川大学教育学部教授としては、次世代の書家育成に尽力し、多くの有能な人材を輩出しました。

藤原鶴来の業績として特筆すべきは、書道史研究における貢献です。「和漢書道史」は、書道の歴史を体系的に解説した書籍として、長年にわたり多くの書道学習者に親しまれています。また、「書源（新書道字典）」は、名跡の筆法を詳細に分析した字典として、書道の実践に不可欠な参考書とされています。

1982年には、中国陝西省西安市にある青龍寺の「空海記念碑」を揮毫しました。この石碑は、空海の偉業を称えるために建立されたものであり、藤原鶴来の書は、日中文化交流の象徴として、現在も多くの人々に親しまれています。

1986年には、長年にわたる書道界への貢献が認められ、文部大臣より「地域文化功労者」として表彰されました。

年譜

1893年：岡山県玉野市に生まれる
1917年：文部省習字科検定試験に合格
1920年：岡山第一中学校教諭に就任
1922年：香川師範学校教諭に就任
1927年：『和漢書道史』を刊行
1924年：日満支三国書道展覧会審査員となる。
1945年：香川師範学校教授に就任
1957年：香川大学教育学部教授に就任
1958年：香川県庁の銅標を揮毫
1962年：香川県文化功労者となる
1963年：四国女子大学教授に就任
1970年：二玄社より『書源』を刊行
1973年：四国新聞文化賞を受賞
1977年：山陽新聞賞を受賞
1982年：青龍寺の「空海記念碑」を揮毫
1986年：文部大臣より「地域文化功労者」として表彰
1990年：逝去

主な著作

『和漢書道史』（1927年、好鵞会、1972年、二玄社）
『書鏡』（1930年、寶文館）
『細字四体帖』（1932年、上田書院）
『弘法大師真蹟集』（1933年、文昌堂）
『間架結構法』（1947年、牧笛写真工芸所）
『書淵』（1953年、好鵞書院）
『般若心経二種』（1969年、好鷺書院）
『書源』（1970年、二玄社）
『新書道字典』（1985年、二玄社）
* 『中国書道大字典 携帯日本版』（1998年、日本放送出版協会）


藤原鶴来は、書家としてだけでなく、書道史研究者、教育者として、多岐にわたる分野でその才能を発揮し、日本の書道界に大きな足跡を残しました。その功績は、今後も永く語り継がれていくことでしょう。

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