比田井天来

比田井天来 (ひだい てんらい)

比田井天来（1872年3月2日 - 1939年1月4日）は、近代日本の書道界において「現代書道の父」と称される著名な書道家です。本名は鴻であり、天来をはじめ画沙、大朴、象之、淳風といった雅号も使用しました。

人物背景

長野県北佐久郡片倉村に生まれた天来は、幼名を常太郎とし、若いころから書道に興味を持っていました。彼は古碑法帖の研究を重ね、古典の臨書を新たな視点で探求し、『学書筌蹄』という著作でその成果をまとめました。特に彼が開発した俯仰法は、高い評価を受けており、古典の再構築における独自の造形世界を創出しました。また、仁和寺に伝わる著名な書物に対する研究でも知られています。

略歴

比田井天来の書道の道は、1887年の協和小学校卒業から始まりました。1892年には上京し、小石川哲学館で漢学を学ぶ傍ら、日下部鳴鶴のもとで培った技術を得ます。1898年には二松學舍に転学し、漢籍や金石文に関する知識を深めました。1900年に名前を鴻から天来に改名し、1901年には書道家である田中元子（後の小琴）と結婚しました。彼の教育者としてのキャリアは東京陸軍地方幼年学校の習字科教授から始まり、1902年に私塾を開きました。1914年には鳴鶴の書勢経営を受け継ぎ、その後も多くの教育機関で講師職を果たしました。

1937年には大日本書道院を設立し、帝国芸術院会員にも推挙されるなど、多岐にわたる業績を残しました。

家族と弟子

天来の家族も書道や絵画といった芸術の道を歩みました。妻の比田井小琴は著名な書家であり、息子の比田井南谷もまた書家として活躍しています。さらに、比田井洵は陶芸家にしてフルート奏者で、長女と次女もそれぞれ書家、洋画家として知られています。彼の教えを受けた門下生も多く、石峯高鳳柱、金子鷗亭、手島右卿、徳野大空など、著名な書道家が育ちました。

天来ゆかりの場所

佐久市望月には、天来の業績を顕彰する「佐久市立天来記念館」や「天来自然公園」が存在します。記念館は1975年に開館し、日本初の書道専門美術館として多くの人々に親しまれています。また、公園内には天来やその家族、弟子たちの作品を称える碑が立ち並び、さらに彼が手がけた石碑は全国に35基ほど確認されています。

彼の影響力は、書道界に留まらず、日本の文化全体に大きな痕跡を残しました。天来の活動とその遺産は今なお多くの人に学ばれ、尊敬され続けています。

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