藤島敏男

藤島敏男（ふじしま としお）

概要

藤島敏男は、1896年（明治29年）7月12日に生まれ、1976年（昭和51年）9月9日に没した日本の登山家、銀行家です。鉄道会館監査役や日本銀行監事も務めました。作家の藤島泰輔は実子であり、ジャニーズ事務所代表取締役の藤島ジュリー景子は孫にあたります。

生い立ちと登山との出会い

神奈川県横浜市で生まれた藤島は、幼少期を三重県菰野町で過ごしました。第一高等学校在学中に旅行部に入部し、登山に魅了されます。特に、1915年（大正4年）に木暮理太郎の講演に感銘を受け、本格的な登山を始めました。岩登りやスキー登山など、様々なスタイルの登山に挑戦し、その才能を開花させていきました。

日本山岳会での活躍

1919年（大正8年）、藤島は日本山岳会に入会します。初期の会員として、数々の開拓的な山行を重ねました。特に、指導者であった木暮理太郎とは、1919年の皇海山、1920年の利根川源流大水上山、平ヶ岳、至仏山、湯ノ小屋などに同行しています。1920年には、登山者として初めて仙ノ倉山と茂倉岳、谷川岳の縦走を成し遂げました。これは記録に残る最古の谷川岳登頂とされています。

銀行家としてのキャリア

1921年（大正10年）、東京帝国大学法学部政治科を卒業した藤島は、日本銀行に入行します。熊本、京都各支店長、文書局局長、監事などを歴任し、銀行家としてもその手腕を発揮しました。

アルプスへの挑戦と晩年

1935年（昭和10年）から3年間、日本銀行パリ駐在時には、マッターホルンをはじめとするスイス・フランスのアルプスの山々に登りました。第二次世界大戦後は、混雑を避け、人里離れた山々を訪ね歩く「避衆登山」を好みました。晩年は、深田久弥と親交を深め、山行を共にすることが多くありました。深田が1971年（昭和46年）に茅ヶ岳で急逝した際にも同行しており、その時の悲しみを「僕達は眠った深田君の傍で、刻々色調の変ってゆく富士を眺めながら、黙然として、暗然として、悄然として佇んでいた。」と回想しています。

晩年には日本山岳会名誉会員となり、深田久弥、小林義正、望月達夫らの勧めにより、1970年（昭和45年）には50余年の文章を集めた『山に忘れたパイプ』を出版しました。これが唯一の著書となっています。

人物像

趣味は登山とスキーでした。住所は東京都港区麻布北日ヶ窪、新宿区諏訪町にありましたが、三重県阿山郡柘植町にも在籍していました。

家族

父は藤島範平。先妻は川原五郎の長女孝子、後妻は関場保の妹紀子です。長男は作家の藤島泰輔です。泰輔の妻には、俳人の高浜虚子の孫である朋子と、ジャニーズ事務所の名誉会長であるメリー喜多川がいます。親戚には、川原五郎や山口利彦などがいます。

参考文献

人事興信所編『人事興信録 第8版』人事興信所、1928年。
人事興信所編『人事興信録 第13版 下』人事興信所、1941年。
人事興信所編『人事興信録 第14版 下』人事興信所、1943年。
人事興信所編『人事興信録 第15版 下』人事興信所、1948年。
人事興信所編『全日本紳士録 昭和34年版』人事興信所、1959年。
深田久弥『わが愛する山々』山と渓谷社〈ヤマケイ文庫〉、2011年。

藤島敏男は、登山家としてだけでなく、銀行家としてもその才能を発揮し、多岐にわたる分野で活躍した人物でした。彼の登山への情熱と、その生涯は、多くの人々に影響を与え続けています。

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