藤田廣志

藤田 廣志 (ふじた ひろし)

概要

藤田廣志は、1926年9月7日に生まれ、2008年11月17日に逝去した日本の著名な金属工学者です。彼は、電子顕微鏡を用いた材料物性の研究において卓越した業績を残し、博士（工学）の学位を取得しました。また、大阪大学の名誉教授として、その学問的貢献が評価されています。

生い立ち

藤田は香川県にて育ち、旧制香川県立三豊中学校と徳島高等工業学校の機械工学科を経て、大阪大学工学部の冶金学科を卒業しました。さらに、大学院に進学し、金属物性専門の研究を行なっています。

学術的業績

大阪大学産業科学研究所において、彼はアルミニウムの再結晶過程における転位の挙動について、電子顕微鏡を使用し詳細な調査を行いました。この研究では、再結晶機構のモデルとして「サブグレイン・コアレッセンス」を提唱し、サブミクロンスケールの内部組織を直接観察できる手法を初めて確立しました。

藤田は、科学技術庁金属材料技術研究所において、世界初の500kV超高圧電子顕微鏡を開発しました。この顕微鏡を用いて、彼はアルミニウムの再結晶過程を動的に観察し、前述の「サブグレイン・コアレッセンス」モデルの検証に成功します。さらに、彼の研究はアルミニウムにおける塑性変形の過程を連続的に観察し、転位の交差すべりによって形成されるプリズマティックループとの関連を明らかにし、加工硬化のメカニズムを解明しました。

これらの研究業績が評価され、1967年に日本電子顕微鏡学会より学会賞（瀬藤賞）を受賞しました。彼は1967年に大阪大学工学部の教授に就任し、冶金学科第六講座を担当しました。その後、1988年には同大学の材料物性工学科で格子欠陥物理学講座を受け持つようになり、さらなる研究を進めました。

彼はまた、3000kVの電子顕微鏡を開発し、この技術により多くの材料における諸現象を原子スケールで動的に解析することを可能にしました。さらに、高電圧下での電子チャンネリングを実証し、新材料の創製に向けての新たな道を切り開きました。加えて、結晶粒子のサイズが一定の値を下回ると物性が異常に変化する現象に気づき、これを「アトム・クラスター」と名付け、新たな現象を発見しました。

晩年

1990年に大阪大学を退官した後、近畿大学理工学総合研究所の教授に就任しました。1994年に「金属塑性変形の超高圧顕微鏡その場の観察による研究」で日本学士院賞を受け、名誉ある称号を得ました。また、2002年には日本学士院の会員に選出され、その業績が広く認められました。

栄典と受賞

藤田は1993年に紫綬褒章、1998年には勲三等旭日中綬章を受章した他、数々の学術賞や栄典を授与されており、その功績は日本の金属工学の発展に大きく寄与しました。

著作

彼の著書には『ミクロの世界・物質編－目で観る物性論』があり、この中でも彼の研究と見解が分かりやすくまとめられています。

藤田廣志の業績は、金属工学と材料物性の研究における重要な一歩であり、その影響は現代の材料科学にまで及んでいます。

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