藤田正勝

藤田 正勝

藤田 正勝（ふじた まさかつ、1949年 - ）は、日本の哲学者、および西洋哲学・思想史と日本哲学史を専門とする研究者です。長年にわたり京都大学で教鞭を執り、現在は同大学の名誉教授の称号を有しています。日本哲学史フォーラム代表や日本シェリング協会会長、西田哲学会理事など、哲学関連学会において要職を歴任しています。

研究の中心は、イマヌエル・カントに続くドイツ観念論哲学、特にゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルやフリードリヒ・シェリングの思想史的研究です。これに加え、近代日本の哲学、とりわけ西田幾多郎をはじめとする京都学派の思想を深く掘り下げています。西洋哲学と日本哲学史という、通常は別個に扱われがちな領域を架橋し、思想の対話を探求している点が研究の特徴として挙げられます。

経歴

1949年、三重県に生を受けました。京都大学文学部哲学科で哲学を修め、1972年に卒業。その後、同大学大学院文学研究科に進学し、1978年に博士課程の単位を取得して満期退学しました。さらなる研鑽を積むため、1982年には当時の西ドイツ・ボーフム大学大学院へ留学し、博士課程を修了して学位を取得しています。

帰国後、1983年に名城大学の講師として教職に就きました。1988年には京都工芸繊維大学の助教授に転任。1991年には母校である京都大学文学部の助教授となり、1996年には文学研究科の教授へと昇任しました。2000年には、これまでの研究成果をまとめた論文『経験・言葉・表現：日本哲学史研究の試み』を京都大学に提出し、文学博士の学位を取得しています。2015年に京都大学を定年により退職し、名誉教授となりました。定年後も、2018年まで京都大学大学院総合生存学館（思修館）の特定教授として教育・研究に携わりました。

受賞

1986年に日本倫理学会より和辻賞を受賞しています。

著作活動

藤田氏は研究活動と並行して、極めて精力的な著作活動を展開しています。自著の研究書のほか、日本の近代思想や京都学派に関する重要な編著を多数手掛けており、研究の成果を広く発信しています。また、清沢満之や九鬼周造といった日本の代表的な思想家の著作の現代語訳や詳細な注釈、シェリングなどドイツ哲学の古典の翻訳も数多く手掛けており、これらの思想家や哲学者の理解を深める上で多大な貢献をしています。

京都学派の中心的人物である西田幾多郎については、『西田幾多郎全集』第3期の編集委員を務めたほか、岩波文庫版『西田幾多郎書簡集』の編纂・解説も担当するなど、その研究と普及に深く関わっています。また、田辺元や三木清といった京都学派に関わる思想家についても、著作の編纂や再考に関する企画に関与しています。

教育分野においても、高校倫理の参考書の編著に携わるなど、幅広い層に向けた哲学思想の普及に努めています。

まとめ

藤田正勝氏は、ドイツ観念論と日本哲学史という二つの柱を深く探求し、その交流点に新たな光を当ててきた第一線の研究者です。長年にわたる大学での教育・研究活動に加え、多数の著作、編著、訳書を通じて、哲学研究の発展と哲学思想の普及に重要な貢献を果たしています。特に、難解とされる日本の近代思想家の著作を読み解きやすい形で提供する翻訳・注釈の業績は、多くの研究者や学生にとって貴重な財産となっています。その多角的な活動は、現代における哲学の可能性を探る上で示唆に富むものです。

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