西田幾多郎

西田 幾多郎

西田 幾多郎（にしだ きたろう）は、1870年5月19日に生まれ、1945年6月7日に亡くなった日本の哲学者であり、京都学派の創始者です。彼は文学博士の学位を取得し、京都大学の名誉教授として広く知られています。特に、1911年に発表した著書『善の研究』や、1933年の『哲学の根本問題』は、彼の思想を代表する重要な作品とされています。彼の哲学は「西田哲学」と呼ばれ、特に「純粋経験」に基づく「真実在」の探究は、西洋の哲学者たちにも多く影響を与えました。

経歴

西田は、加賀国河北郡森村（現在の石川県かほく市）に、西田得登と寅三の長男として生まれました。彼の家系は、江戸時代から加賀藩の大庄屋を務める裕福な家庭でしたが、幼少期には多くの苦難に直面しました。家族の死や、父の破産、学歴に基づく差別など、さまざまな逆境が彼を襲います。大学を卒業後は中学の教師となり、その傍らで哲学や思索に励みました。

特に、哲学への関心が高まったのは石川県専門学校でのことで、ここで彼は古今東西の書物に触れ、教養を深めました。東京帝国大学に入学後は、本格的に哲学を学び、教職に就いた後も、さまざまな学校を巡りました。彼は、海へ赴くことで心を落ち着けていたと語り、また、禅に打ち込むことで内面的な成長を目指していました。

京都帝国大学教授としての活動

西田は、18年間にわたり京都帝国大学で教鞭を執り、多くの後進たちを指導しました。この時期、多くの本を著し、彼の思想は哲学だけでなく、物理学や文学など幅広い分野に及びました。彼は特に哲学における「自覚の重要性」を提唱し、その影響は日本国内外に広がりました。彼の著作によって、より多くの人々が哲学に興味を持ち、心を動かされました。

晩年と哲学的探求

晩年には国策研究会に参加し、当時の国家的な方針に対しても自らの哲学を反映させようとしました。しかし、彼の視点は必ずしも受け入れられることはなく、特に政治と哲学の関係について苦悩しました。1945年に亡くなるまで哲学の探求を続け、その思想は後世に大きな影響を残します。

哲学的思想

西田の哲学は、禅仏教と近代哲学の融合を試みた独自のものであり、彼は「絶対矛盾的自己同一」などの概念を通じて、意識や存在について深い考察を行いました。彼の著作においては、純粋経験から自己の発展を論じ、また宗教の重要性を説きました。このように、彼の思想は複雑で難解な面がある一方で、深い洞察をもたらしました。

名言と家族

西田は、「善とは一言にていえば人格の実現である」や「衝突矛盾のあるところに精神あり」というように、多くの名言を残しました。また、彼の家族の中には、歌人の上田彌生や、エッセイストの西田静子がいます。

彼の生涯と思想は、現代の哲学に多大な影響を与えており、彼を取り巻く人々や研究者たちによって今もなお語り継がれています。

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