藪入り

藪入り（やぶいり）とは

藪入りとは、かつて商家などで住み込みで働いていた丁稚や女中などの奉公人が、年に2回、実家へ帰ることが許された休日のことです。旧暦の1月16日と7月16日が藪入りの日に当たり、特に7月の藪入りは「後の藪入り」とも呼ばれていました。

藪入りの由来

藪入りの習慣は、江戸時代に都市の商家を中心に広まったとされています。元々は、嫁取り婚において嫁が実家へ帰る日であったものが、都市化の進展とともに商家の習慣へと変化したと考えられています。関西地方や鹿児島地方では「オヤゲンゾ（親見参）」、関西では「六入り」と呼ばれることもありました。これは、藪入りの日が毎月6のつく日に行われることに由来します。

藪入りの日が旧暦の1月16日と7月16日になったのは、旧暦1月15日（小正月）と旧暦7月15日（盆）がそれぞれ重要な祭日であり、奉公先での行事を終えた後に実家でも行事に参加できるようにという配慮からでした。また、藪入りの日は、地獄で閻魔大王が亡者を責めさいなむことをやめる日とされ、各地の閻魔堂や十王堂で開帳や縁日が行われるようになりました。

藪入りの変遷

藪入りの日には、主人は奉公人たちに新しい着物や履物、小遣い、手土産などを与えて実家へ送り出しました。実家では、家族と久しぶりの再会を喜び、ゆっくりと休日を過ごしました。また、遠方から出てきていたり、成人して実家へ帰ることができない奉公人は、芝居見物や買い物などを楽しんで過ごしました。

藪入りは、正月と盆の付随行事であったため、明治維新後の改暦に伴い、新暦へと移行しました。文明開化後も商家の労働環境は大きく変わらず、産業化の進展とともに労働者の数が増大したため、藪入りはさらに大きな行事となりました。藪入りの日には、浅草などの繁華街が奉公人たちで賑わい、特に映画（活動写真）はこの時期に大きく発展しました。

第二次世界大戦後、労働基準法の強化により労働スタイルが変化し、週休2日制が定着すると、藪入りは次第に廃れていきました。現在では、正月休みや盆休みに統合され、帰省という形でその名残を留めています。

藪入りの語源と影響

藪入りの語源には諸説あり、はっきりとしたことはわかっていません。「藪の深い田舎に帰るから」という説や、「宿入り（実家へ帰る）」が転訛したという説があります。なお、大奥の女性たちが実家に帰ることは「宿下がり」と呼ばれていました。

藪入りは、奉公人にとっては年に2度だけの貴重な休日であり、大きなイベントであったため、これにちなんだ小説や俳句、落語（「藪入り、旧題お釜さま」など）が数多く残っています。

関連項目

ボクシング・デー

外部リンク

『藪入り』 - コトバンク
『やぶ入り(藪入り)』 - コトバンク
『藪入』 - コトバンク
* 『藪入り・薮入り』 - コトバンク

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