蘇花公路

蘇花公路（スファこうろ）は、台湾の東部、宜蘭県と花蓮県を結ぶ省道台9線の一部であり、その風光明媚な景観から多くの人々を魅了する道路です。この道路は、宜蘭県蘇澳鎮の白米橋を起点とし、南方澳、東澳、南澳、武塔、漢本、大濁水橋（県境）、和平、和中、和仁、清水断崖、崇徳、太魯閣大橋、三棧、景美、北埔などを経て、花蓮県花蓮市の中正路へと至る、全長約96kmにおよぶ道です。

蘇花公路の歴史は古く、1874年に建設が開始され、1876年に完成しました。日本統治時代には、「臨海公路」と名付けられ、数度の改修を経て1932年に全長100.524kmの自動車道として整備されました。その後、1949年からは公路局（現在の公路総局）の管理下となり、1974年から1990年にかけて道路の拡幅と改良工事が行われました。この大規模な工事には16年4ヶ月もの歳月を要し、1990年12月25日に交通規制が解除されました。この時に省道台9線に編入され、地元では現在も「蘇花公路」の愛称で親しまれています。

1990年代に入ると、台湾では初の高速道路建設構想である「環島高速道路網発展計画」が策定されました。これと並行して、交通部は蘇花公路の山岳区間の改善を目的とした「蘇花公路山区路段改善計画（通称：蘇花改）」を策定し、2008年11月10日に行政院で承認されました。2011年1月29日に着工され、蘇澳～東澳間は2018年2月5日に開通、残る南澳～和平間、和中～大清水間も2020年1月5日に開通し、全線が開通しました。

蘇花公路の全線開通後には、台北市から花蓮市までの高速バス路線「北花線（回遊号）」が、統聯客運、台北客運、首都客運によって運行を開始しました。かつて運行されていた北花線は、鉄道の北廻線の開業後に乗客数が減少し廃止されていましたが、約20年ぶりに復活したことになります。また、同日には短距離便として、国光客運と葛瑪蘭客運が蘇澳と花蓮間の路線バス（宜蘭県市区公車、花蓮県市区公車）の運行を開始しました。しかし、料金が鉄道と大差がないこと、所要時間では鉄道の方が圧倒的に短いことなどから、当初は24時間高頻度で運行していたバスも空席が目立つ便が多く、相次いで減便が重ねられました。近年では各社1日1往復の運行に減便されており、統聯客運と台北客運は共同運行化しています。2024年4月3日に発生した花蓮地方の地震により、蘇花公路は道路が通行止めとなり、高速バスの運行は無期限で運休となっています。

蘇花公路は、その美しい景観と歴史的な背景から、観光客にも人気の高い道路です。しかし、その一方で、急峻な地形や自然災害の影響を受けやすく、道路の維持管理が難しいという側面も持ち合わせています。今後の道路の復旧と、より安全で快適な交通インフラの整備が望まれます。

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