蘭と狗

蘭と狗

『蘭と狗』（らんといぬ）は、中村勝行によって書かれた時代小説で、1996年に講談社から刊行された。この作品は、幕末の激動を背景に、高野長英の脱藩と彼を追う岡っ引の物語を描いている。物語は1839年から始まり、蛮社の獄で捕らえられた高野長英が主人公だ。

あらすじ

物語の舞台は、蛮社の獄により長英が捕縛される場面から始まる。長英は蘭学の研究者として知られていたが、幕府の意向によって、彼を抹殺するために捕まえられることになった。その背景には、彼が持つ知識が権力者たちにとって脅威となるという新たな時代の風潮があった。彼を捕らえたのは、同心の小林藤太郎と岡っ引の瓢六であった。

長英は自首しようかと考えながらも、捕らえられることに納得がいかず、非人栄蔵をそそのかして放火を起こさせる。混乱の中、長英は逃走することに成功するが、栄蔵の放火によって瓢六の妻が命を落とすという悲劇が起こる。瓢六は、長英の脱藩の真相を知り、怒りに燃えて彼を追うことを決意する。

瓢六は岡っ引の職を辞し、長英の逃走を追い始めるが、追跡が進むにつれて彼の周囲も変化していく。瓢六は仲間の仲間や同僚からも孤立し、「いつまで過去のことを」と陰口を叩かれるようになっていく。一方、長英は追い詰められ、多くの援助者を失いながらも生き延びていこうとする。

この作品は、高野長英の心理的な葛藤や、瓢六の執念の追跡が中心となって進行する物語であり、恋愛や友情、裏切りが交錯する緊迫した展開が魅力にあふれている。

テレビドラマ

この小説は、1997年5月6日にABCテレビで放送されたスペシャルドラマ『大追跡! 江戸〜上州〜みちのく〜四国』としても知られている。ドラマ版では製作をABCと松竹が担当し、監督は斎藤武市が務めた。脚本は中村敦夫によって書かれた。

終わりに

『蘭と狗』は、歴史的な事件や人物を題材にした緊迫感あふれるストーリーが展開されており、当時の社会情勢や人々の思いも描かれている。この作品を通じて、幕末の時代の複雑な人間関係や信念を垣間見ることができる。中村勝行の見事な筆致によるこの時代小説は、多くの読者に愛され続けている。

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